最近、少しずつリアルな不動産業界の研修セミナーや講演などが増えてきたように感じる。コロナ禍の時は、こうしたセミナーなどは、大幅に減少したが、今はすっかり戻ってきている印象だ。
不動産業界向けのセミナーを受け、最新のユーザートレンドをキャッチし、細かい施策を打つことは、それはそれで効果的だと感じる。
しかし、こうしたセミナーなどの実務研修以外にも、より使える知見や新しい取り組みなどを発見する方法があることを忘れてはいけない。
目次
マーケティングリサーチとは
一般的に市場の動向やユーザーのトレンドの調査をする場合は、「マーケティングリサーチ」というものを実行する。マーケティングリサーチでは、ユーザーにアンケート調査をしたり、さらに調査会社に依頼し、統計データなどを参照し、最近の市場把握を行う方法が一般的だ。
たしかに、大規模な新規サービスや、大型の開発案件などに対して、こうしたマーケティングリサーチは、とても効果的である。もっと言えば、こうした案件に関して、マーケティングリサーチを導入しない企業を探すほうが難しいだろう。
では、一般的に中小規模の仲介会社が、こうしたマーケティングリサーチを実施できるかと言えば、ほとんど実施はできていない。残念ながら、それなりの予算がなければ、調査会社等は、なかなか使えないのが実情だ。
中小規模の企業におけるマーケティングリサーチ
しかし、そうはいえども、中小規模の仲介会社でも、マーケティングリサーチをする方法はある。そしてその内容を基に、諸々の施策を自社で打てることもできたりするのだ。
ちなみに、賃貸仲介においてのユーザーの年齢層は20代、30代がメインになっている。おそらく今後、40代のユーザーが増えるなどの年齢層の変化は起こるかもしれないが、あくまで賃貸市場のユーザーのメインの部分は、20代、30代であまり変わらないだろう。
私がまだ大学生の頃の話である。当時の不動産会社の集客方法は、「ビラを撒く」ことだった。このビラ撒きという作業は、意外に奥が深く、たとえば適当な場所でビラを撒いても、全く受け取ってもらえない。最適な場所でビラを撒かなければ意味がなかった。
またそれだけではなく、ビラの内容自体にも拘らなければいけない。単純に物件情報を羅列するだけではダメで、より集客してもらえるように工夫する必要があった。
その当時、大学に近い場所で出店している不動産会社では、よく大学生たちをアルバイトとして雇用していた。勿論、ビラバイトとしての雇用ではあるが、それ以外にも、「彼らの住宅ニーズのトレンドを聞く」という目的があった。学生のニーズを聞くことで、広告の内容を変えたり、また募集賃料を細かく設定したりなど、細かい対策を打っていた。
またビラ撒きの場所なども、「一回生が通る道」、「実家暮らしの学生が通る道」などをヒアリングし、そのスポットにビラ撒きのアルバイトメンバーをセットしていた。
今考えれば非常に原始的なやり方だが、これはこれで立派なマーケティング活動である。
また、数年前にお会いした不動産会社の社長さんは、20代の学生や新卒のメンバーとよく懇親会を行っていた。その社長の目的は、「20代のかたの実情やニーズを聞く」ことだった。
彼らのトレンドや、気になっていること、そして部屋探しの方法やニーズなどを酒席でヒアリングし、そしてそれを現実の事業に役立てていた。
実際にその会社は、他社よりもいち早く、SNS集客に取り組み、上手く仲介業務を軌道に乗せている。
まとめ
このように賃貸仲介のターゲットとなる20代のかたの実際の声を聞くことが、一番のリサーチマーケティングになる。当然のことながら、人は歳をとる。年齢を重ねていくと、だんだんと価値観やツールなどが、20代のユーザーとズレていくのだろう。
もし集客や営業施策に悩まれていたら、研修だけでなく、こうしたマーケティングリサーチ、つまり「ユーザーの声を聞く」ということをやってみても良いかもしれない。
世の中に生まれていない新しい仲介サービスは、意外と、20代のユーザーとの会話から生まれていくのかもしれない。
記事提供:南総合研究所