不動産系のSNSは、誰が見ているのか?[南総合研究所]

  1. 不動産事業者向けコラム

「誰が」不動産系SNSを見ているか

 この一年で、多くの不動産会社が積極的にSNSに取り組んでいる。ツールも、以前はfacebookが主流だったのが、今や、Twitter、YouTubeや Instagram、TikTokと多岐に渡る。なかには、数万人のフォロワーを獲得し、ビジネスに繋げている企業もあれば、まだ数十人のフォロワーしか獲得していなく四苦八苦している企業もある。いずれにしても、現在もこれからも、ポータルサイトに変わっていく広告媒体として、SNSが筆頭にあげられていくのは、変わりないだろう。また、企業の取り組みや発信を行う場としてのツールとしても、引き続き利用されていくことは、間違いない。

 しかしながら、実際のところ、この不動産会社が発信する、もしくは不動産情報や知見に関してのSNSを「誰が」見ているのか、を分析、検証されていることは、少ない。SNSは、当然のことだが、不特定多数の人間が目にする。しかし、不動産関係のSNSは、ある種、独特の世界であり、意識的にその発信をチェックする人間でなければ、意外と目にすることは少ないのも現実だ。今回は、この「誰が」不動産系SNSを見ているかというところを少しまとめてみたい。

実際に不動産を借りること、購入することを具体的に検討しているユーザー

 まず最初に思いつくのは、実際に物件を検討しているユーザーだ。よく言われることだが、最近の20代のかたがたは、調べものをする際に、検索サイトをあまり使わないと言われている。まずSNSで検索を行い、そこから知見を得る。当然、部屋探しでも、エリア情報や物件情報をSNSで調べるユーザーは増加傾向にある。ただ、このユーザーに関しては、「すでに検討エリアが決まっている」、また「これから借りよう、もしくは購入しようとする物件の賃料、購入価格、その種別が決定している」というユーザーに限られる。また、こうしたユーザーに対しての物件の希求方法は、実際のところ、かなり難易度が高い。ハッシュタグでエリアや物件の特徴を物件記事と共に記載していくのが常套手段になるのだが、実際にユーザーの希望通りにマッチングさせ、成約に結び付けるのは、それ相当の技術が必要になる。

これから物件を借りよう、買おう(もしくは売却)としているが、その方法がわからないユーザー

 上記の希望条件が確定しているユーザーの前段階として、これから物件を借りる、購入もしくは売却しようとする際に、その方法自体がわからないユーザーも不動産系のSNSを覗く。むしろ上記のユーザーより、このようなユーザーのほうがSNSを熱心に見ることが多いような感覚がある。物件の借り方、買い方、売り方のノウハウをYouTubeで発信すると、それなりの視聴回数を記録することができるのは、おそらく、こうした一般的なノウハウがあまり世の中に浸透していないのが理由のひとつだろう。ちなみに、このようなノウハウを動画やテキストでまとめていくと、着実にフォロワーを伸ばすことができる。

既に部屋を借りた、もしくは物件購入をしているが、購入後に、その商材の評判の確認作業をしたいユーザー

 諸々検討し、実際に不動産取引を完了しているユーザーも、よく不動産系のSNSを確認する。これは、自分自身が購入したものを「正当化」する作業にあたる。特にこうした作業は、高額購入したユーザーに多い傾向だ。不動産系のSNSでは、特にエリア情報やタワーマンションなどの有名物件などの情報発信などを見るユーザーがそうだ。たとえば、「購入か賃貸か」、「タワーマンションの資産価値」、「これから地価が上がるエリア」などのテーマでのSNSは、これから購入検討するユーザーよりも、既に購入したユーザーがよく見ている印象が強い。

 よく上記のような議論が白熱するのも、こうした購入完了したユーザーが参加するのが理由だろう。また、こうしたSNS上の議論に対して、ユーザーがそれぞれの経験談を語る。そうして、その経験談を基に、新規のユーザーが購入検討の参考にする、というスパイラルを生み出すことができる。まさにSNSマーケティングの醍醐味である。

不動産SNS

投資家

 物件を借りたい、買いたい、売りたいというエンドユーザーとは、別に、資産運用を行なっている投資家もよく不動産系のSNSを覗いている。これは決して大家業を行っている投資家だけではなく、株式投資等を行なっている一般投資家も含まれる。投資商品のポートフォリオとして、「不動産投資」として価値があるのか、そのリスクはどのようなものかを確認するためのツールとして、SNSを利用する。投資としての不動産は、ある意味、他の投資商品とは違う側面があり、最近はそうした投資商品としての不動産の価値をフューチャーするSNSも多い。

物件オーナー

 少し前までは、オーナー同士の情報交換は、限定的であったが、最近はSNSの浸透により、多くの情報交換が可能になった。SNSで、満室稼働のコツや賃貸経営ノウハウ、また失敗経験などをシェアする。大家にしてみれば、これは大変有益な情報だ。特にこうしたオーナーの経験談に多くの反響が生まれるのは、こうした内容があまり世間に出ていないためだろう。特定の不動産会社に言うことを鵜呑みにする前に、様々な情報をSNSで確認することができることは、まさにSNSの恩恵であろう。またSNS上で、他のオーナーと繋がることもできることも、オーナーにとって、大きなメリットである。

単純に不動産が好きなユーザー

 高級な部屋を紹介する動画、またオシャレなリノベーションの部屋を紹介するSNS記事などのような「尖った」物件情報を見ることを好む人たちがこれにあたる。発信者側の物件のコンテンツ力、そして撮影の仕方によって、大きな再生回数を稼ぐことができるのは、こうしたユーザーを上手く取り込んでいるのが大きな理由だろう。絶景動画や、特殊な経験の動画などが、再生回数を稼ぎやすいことと、同じことかもしれない。

 また、世の中には一定数、物件マニア、不動産マニアという人たちも存在する。ポータルサイトで物件情報を覗くことが趣味だという人は、意外と多いものだ。ちなみに、こうしたユーザーは、特に物件を借りる、購入しようとする予定はない。あくまで「習慣」でさまざまなSNSを定期的に覗き、面白い物件をチェックする。発信者側にとっては、こうしたユーザーが、再生回数を伸ばしたり、フォロワー増加をするための大きな寄与になることもあるので、しっかりと取り込んでいくと、大きな強みになる。

 同業者、不動産関係者

 結局のところ、この同業者、不動産関係者が相当数を占めているのではないかと思うほど、最近は業者間のSNS内でのやり取りが活発だ。同業者同士のノウハウの共有、業界のあるあるネタは、実際、かなり盛り上がる。またこのようなやり取りの全てが不毛なわけではなく、業界の横の繋がりを促進するという一面もある。

 SNS上のやり取りから、実際の商談に繋がって、物件の購入に至ったり、さらには協業したりという事例は、最近は本当に多い。

 不動産業界は、他社との繋がりがとても重要だ。物件情報のやり取りから、法改正による対応、営業ノウハウなど、こうした情報交換を行うことは、不動産会社、関係者にとって、とても有益であるだろう。

不動産SNS

まとめ 

 以上のように、ただ不動産系のSNSといっても、様々なユーザーがそれを覗き、またシェアをしている。これからSNSを運用していこうと考えている不動産会社は、是非参考にして欲しい。「誰」に届けるかで、投稿内容、ツールは大きく異なっていく。

 自身の事業にとって、「誰が」ターゲットなのかを改めて分析することで、より最適なSNS戦略が打てる筈だ。


記事提供:南総合研究所

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