不動産会社が今のうちに身につけたほうがよい「企画力」とは?【南総合研究所】

  1. 不動産事業者向けコラム

 首都圏の都心部の賃貸物件の稼働率がとても高い。昨年もコロナ渦の稼働率から随分回復し、高稼働の状況だったが、今年はそれにも増して、高い稼働率だ。仲介の現場の声を聞くと、かなり募集中の物件が少ないようだ。また募集になった空室物件は、あっという間に埋まってしまうらしい。

 管理を持たない純粋な仲介事業は、市場に空室が多ければ多いほど、事業は好調になる傾向が強い。空室が多いため、様々な物件の広告掲載を行う。それによりユーザーの選択肢は増え、問い合わせは増える。そして仲介会社は、成約すれば広告料などの収入が増え、収益が増加する。実際、リーマンショック後、かなり元気だったのは、東京都心部の賃貸仲介会社だった。

 しかし、現在のように都心部の空室が少ない状況は、かなり都心部の仲介事業専業の会社にとって、厳しいだろう。空室が少ない場合は、当然オーナー、管理会社の広告費はおさえられる。それにより、仲介会社の成約単価は下がっていく。このトレンドは、あと数年は続きそうだ。

 いっぽうで、都心部の管理会社はかなり業績が良い。私の支援業務で管理会社に向けた空室対策の支援業務があるが、今、そのニーズは都心部の管理会社には殆どないだろう。稼働率が高いため、今、都心部の管理会社は、どんどん更新時に値上げ交渉を入居者に打診している。これまでは考えられなかったことだが、よくよく考えると、殆ど賃料は、インフレの影響をこれまで受けていなかったので、今回は、経済合理的には、当然と言えば当然のことなのかもしれない。

 このような都心部の状況と比較して、郊外はどうだろうか?首都圏の郊外に関しては、稼働率の良い物件とそうではない物件が二極化しているような印象だ。人気エリアのファミリータイプの賃貸物件は、すぐに埋まる。しかし、不人気エリアの単身マンションなどは、現在も空室が多い。

 ただそうは言っても、興味深いのは、人気不人気エリアに関わらず、すぐ満室稼働ができている物件とそうではない物件があるということだ。エリアや条件が同じように厳しい物件でも、ある物件は高い稼働率を維持し、また別のある物件はそうではない。これは管理会社の取り組みによるものが大きい印象を受ける。空室対策を打って、仲介会社にしっかりとアピールできるような営業を行ったり、リフォーム等を行い、それをユーザーにアピールしたりすることで、空室を解消することができている場合は、高い稼働率を維持している。このあたりの取り組み方で大きく稼働率に差が生まれるのは、とても興味深いものである。

 また郊外には、古い中古の全空室の物件などもある。こうした物件に手を入れてリノベーションをして、満室稼働させている物件なども増えてきた。まさにこのあたりは、不動産会社の「企画力」によるものだろう。

 また住宅領域ではなく、事業用物件でも同様のケースが目立ってきた。事業用不動産は、住宅不動産と比べて、経済状況が反映されやすい。坪単価の変動などは、まさに経済状況に左右される。

 なかなか手に余るオフィスビルなどをリノベーションしたり、用途を変えて、生まれ変わらせることで、いっきに人が集まるようにできるケースを最近多く目にする。

 とある不動産会社では、古い郊外の本社ビルをリノベーションし、コワーキングスペースとオフィス区画にし、稼働率を上げていた。また、とある会社では、古い郊外の蔵をリノベーションし、飲食店にし、一気に人気店にしていた。

 これからもしかしたら不動産会社に求められるものは、このような強い企画力なのかもしれない。今までの形式通りのリーシング戦略だけではなく、ひとつのアイデアで他社と異なるリーシングを実施したり、リフォームリノベーションを提案する。また、オフィス物件なども、強い企画力のある提案をすることで、オーナーから管理受託を依頼されるケースもある。

 このあたりは、これまではどちらかといえば、大手のディベロッパー会社などの得意領域だった。しかし、最近はこのような企画を大手が、ベンチャーの不動産会社に依頼するケースも増えてきた。中小の不動産会社でも、こうした企画提案を行う機会はゼロではないだろう。

 では、このような企画力を養うためには、会社でどのような取り組みを行うのが良いだろうか。ひとつは、他社の事例を定期的に情報取得する文化である。こうした企画力のある会社の多くは、他社の取り組みの情報を社内でシェアすることで、自社の企画力のポテンシャルを高めている。またもうひとつは、「ディスカッションする場」を社内で作ることである。よくある「空室対策」の重たい会議とは異なり、アイデアベースで自由に意見を言えるような場を設ける。これにより、会社全体でアイデアを組成する力を養うことができる。

 これからの数年間で、これまでの中小の不動産会社の在り方は変わっていくかもしれない。是非、社内で「企画力」をつける施策を試してみてほしい。


記事提供:南総合研究所


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