不動産業界に残る大きな課題のひとつ「引っ越し時の荷物の問題」について【南総合研究所】

  1. 不動産事業者向けコラム

 これまで多くのユーザーのお部屋探しの現場、そして退去していくユーザーの引っ越し現場を見た際に気づいたことがある。それは、ユーザーの引っ越しの際には必ずと言っていいほど、荷物の量や処分に関する問題が生じていることだ。

 引っ越しは新しい生活への期待もある一方で、荷造りや荷物の整理といった作業が大きな負担となりやすい。特に長年住んだ住まいからの引っ越しでは、積もり積もった荷物の多さに圧倒されることが多く、どこから手を付けていいか悩む人も少なくない。日々の生活の中で必要と感じるもの、思い出が詰まったものなど、捨てがたい物が多いことも荷造りの障害となる。さらに、使わなくなった家電や、破損した家具、季節外れの衣類など、今後の生活に本当に必要かどうか判断しづらい荷物も多い。こうした不要な荷物は処分したいものの、リサイクルや廃棄の手間、あるいは費用がかかることもあり、簡単には片付かないのが現実だ。引っ越し時の荷物の問題は、このように整理と決断を必要とする要素が多く、限られた時間で作業を行う必要もあるため、ユーザーにとって、非常に大きなストレスになる。
 これまで多くの不動産サービスが登場し、引っ越しや住環境に関わるユーザーの悩みに対応してきた。特に「トランクサービス」のような、引っ越し時に荷物を一時的に預かってくれるサービスがあることで、荷物を一時的にでも減らせる選択肢が増え、荷造りや引っ越し作業の負担を軽減できるようになっている。

 これにより、持ち運ぶ必要のない季節外れの衣類や一時的に使用しない物品を預け、引っ越し後の荷解きの手間を減らせるという点では、ある程度のメリットがある。しかし、現実的には、こうしたサービスが提供する一時預かりのみに頼るだけでは、引っ越し時の荷物の根本的な解決には至っていないのだ。たとえば、預けるだけで結局整理が進まなかったり、預けた荷物の管理やその後の取り出しに時間とコストがかかることもある。特に引っ越しが遠方であったり、預けた荷物が多い場合には、返却や配送の手間や費用が嵩むこともある。 そのため、トランクサービスだけでは「荷物の問題」を根本的に解決するには不十分であり、さらに革新的なサービスが求められているのが現状のように感じる。
 引っ越し時の荷物の問題を根本的に解決するためには、既存のトランクサービスに加え、さらに進化した荷物軽減サービスが求められている。今回の記事では、そのためのいくつかのアイデアを提案してみたいと思う。まず、「整理収納アドバイザー」による訪問サポートサービスがあると良いかもしれない。アドバイザーがユーザーの引っ越し前に訪問し、持っていくべきものと処分すべきものを一緒に仕分けしてくれる。プロのアドバイスにより、ユーザーは自分だけでは判断がつかない物品の取捨選択がしやすくなる。また、リサイクルショップや寄付団体と提携し、その場で不要品を引き取ってくれるサービスがあれば、即座に荷物を減らすことができ、よりスマートに荷造りが進むだろう。

  次に、家具や家電の「現地調達サポートサービス」も注目すべきサービスになりえる。引っ越し先で必要な家具や家電をレンタルや購入できるようにし、現在住まいにある大きな家具や家電を持って行かなくて済むようにする。これにより、特に遠方への引っ越しの際に、荷物の搬送費用を大幅に抑えることができ、身軽な移動が実現できる。また、荷物を一時的に保管するだけでなく、引っ越しのたびに利用できる「個別品ごとのレンタルサービス」も有効だろう。シーズン毎に必要となるスキー用品やキャンプ道具、滅多に使わない大物家電などを、引っ越し先の近くで必要な期間だけ借りられるサービスがあれば、所有する荷物を最小限に抑えられるかもしれない。

 最後に、デジタル化の支援も重要だ。古い写真や書類をスキャンしてデジタルデータ化するサービスがあれば、かさばる紙媒体を大幅に減らせ、引っ越しの際の荷物がスッキリする。こうした新たなサービスを導入することで、引っ越し時に必要なものだけを厳選し、身軽で効率的な引っ越しが実現するだろう。以上のようなサービスは、同様のものがいくつかリリースされているかもしれないが、まだ一般的な認知度は低いのと、我々のライフスタイルには浸透できてはいない。
 もし引っ越し時の荷物に関する問題がこうした新しいサービスによって解決されれば、不動産業界にも大きな変化が生まれるかもしれない。引っ越しが手軽で負担の少ないものとなれば、住環境を見直す頻度が増え、より多くの人が気軽に転居できるようになるだろう。その結果、住む地域や物件を選ぶ幅が広がり、多様なライフスタイルに対応した住まい方が可能となる。引っ越しの負担が減り、人々がより自由に生活環境を変えやすくなれば、不動産業界におけるサービスの発展や、市場の活性化も期待できるのだ。


記事提供:南総合研究所


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