最近、地方都市に行く機会が多い。コロナ禍も明け、多くの街で人通りが戻ってきているようだが、そのエリアの不動産会社のかたと話をすると、なかなか厳しい現実を聞かされる。
とある地方都市では、賃貸物件の空室増加に歯止めがかからないようだ。これまで高い稼働率があった物件も、退去が続き空室が増えているとのこと。また、人口自体の流出も止まらず、県内への流入数も減っているとのことだ。実際にこうしたエリアは、ご存知のように全国各地に見られる。そのなかでも、いろいろな空室対策を打って高い稼働率を維持させている不動産会社のかたは、本当に素晴らしいと思う。
実際に地方のワンルームの賃貸物件が空き始める理由は、いくつか明確な理由がある。ひとつは、大学の新入生が、無理に下宿住まいをせず、実家から通い始めることが理由のひとつになっているようだ。当然、下宿をすれば仕送りなどによって、親の負担が大きい。こうした負担を減らすために、実家から通える大学に子供を進学させる。
また、もうひとつは、転勤などの減少である。大手企業などは、現在も一定の転勤需要があるが、中小企業だと全体的に減っている。これにより、賃貸物件に空室が生まれてくる。
こうした背景に加えて、その県に引っ越す明確な理由がないため、流入数が減少の一途をたどってしまう。空室対策をして、多少なりとも稼働率を上げたとしても、母数自体が増えない限りは、供給数には追いついていかないだろう。
こうした現状を打破するために、各行政では、さまざまな対策を打っている。街の新しい商業施設の開発や観光スポットのアピールなど、各自治体でいろいろと手を打っているようだ。
では、そのなかでもこうした地域の不動産会社は、何ができるだろうか?当然のことながら、その地域が活性化すればするほど、その地域での不動産取引は増加し、不動産会社自身も潤うことができる。しかし、こうした理屈は、頭では理解していてもなかなか実行に移すことは難しい。
今回は、不動産会社としてできる地域のPR活動をいくつか紹介してみたい。
・空き家対策としてのリノベーション
一番、スタンダードな方法として、空き家対策が挙げられる。空き家をリノベーションして、所有者が賃貸に出すことをサポートする。また中古物件の購入者に対し、リノベーションを行う。
重要なことは、こうした事例を不動産会社としてしっかり発信していかなければならないことだ。実際にこうした地方のリノベーション施工は多くあるものの、あまり表に出させれていないケースも多い。
また、住宅だけではなく、商業ビルなどをリノベーションを実施し、新しいコンテンツを入れ、募集活動を行うことも、空き物件の対策として有効な打ち手だ。
こうしたリノベーションによって、県外からの移住者を取り込むことができれば、大成功である。
・街情報の発信
いくつかの不動産会社では、街のおすすめスポットや名所などをSNSで積極的に発信している。これも立派なPR活動になるだろう。特に不動産会社として独自の視点を持って発信することが効果的だ。なかなかこうした取り組みは、収益化が難しいが、中長期的に見ていくと、地域のPRのみならず、不動産会社のPRになる。
・地域の人との交流とその発信
特に地方の不動産会社では、地域の人々との交流が重要になる。賃貸管理物件受託などは、信頼のできる不動産会社に任せたい地方のオーナーは、とても多い。さらに相続対策としてのマンション建設の話や売却の相談なども、地域の知り合いの不動産会社に任せるケースも多い。不動産事業として、しっかり地域活動に貢献し、地域住民と交流していくことは重要な施策になる。
また入居者と積極的に交流を図る不動産会社も多い。イベントの開催を行い、住民間での交流を図る。
また、こうした取り組みも当然のことながら積極的に発信をしていかなければならない。SNSの発信やプレスリリースなどを打つことで、地域のアピールをすることができるだろう。
・開発
不動産会社の醍醐味として、街の開発もあげられる。当然、開発案件になると、地方自治体との連携が重要になるし、住民の理解も得ていかなければならない。しかし、流入人口を増やすために新しい観光スポットや商業施設を作ることは、一番効果的な施策であることは、間違いない。該当エリアの住民との折衝や地権者との調整などは、地域の不動産会社としての強みが出せるところでもある。大手開発会社が引き受けるケースが圧倒的に多いが、こうした案件が発生した時にしっかりと実施していかなければならない。
以上のように、開発案件以外の施策は、いずれも不動産会社としての発信やPRが重要になってくる。空き家対策を実施した際のアピール、地域住民との交流のアピール、そして街の発信などは、地域の不動産会社が積極的に発信していかなければ、なかなか一般のかたには、届かない。
地道なことかもしれないが、こうした各施策により、流入人口が少しでも増えていけば、賃貸物件の空室対策の一助になるかもしれない。
改めて自社の活動を振り返ってみてほしい。
記事提供:南総合研究所