不動産業は、多くのジャンルの集合体である【南総合研究所】

  1. 不動産事業者向けコラム

 先日、とあるかたから不動産業界への転職を相談された。仕事柄、こういった相談をよく受けることがある。

 また、別の話として、とある仲介営業のかたが、不動産開発業を行う会社に転職した。彼は、仲介の仕事で大きな成果を残していたが、残念ながら、開発の仕事(おもに、土地の仕入れ)では、全く成果が生まれなかった。こうしたケースは、たくさん見聞きする。

 ちなみに、冒頭に話した転職希望のかたがイメージしていた「不動産の仕事」というのは、賃貸仲介業務だった。そのかたが、向いているいないはさておき、当然のことながら、不動産の仕事は、賃貸仲介だけではない。

 話は変わるが、私は格闘技を見るのが大好きである。ボクシングもキックボクシングも、総合格闘技もかなり好きで、少しマニアなところがあるぐらい、実際に現地観戦に行ったり、PPVで多くの試合を観戦をしている。実際に、「格闘技」といっても、ボクシングとキックボクシングでは、大きくルールも、試合内容も異なる。当然、総合格闘技も全く他の格闘技競技とは異なる。ボクシングが得意な選手が、いきなり総合格闘家に転向しても、ほぼ上手くいかない。そのジャンルによって、トレーニング方法も変われば、戦略も変わる。もっと言えば、試合中の相手選手との距離も変われば、戦い方も大きく変わる。

 不動産の仕事も似たようなところがある。不動産の仕事といっても、多くの種類がある。世間的に一般的なものは、賃貸仲介や売買仲介のような仲介業だろうか。「不動産の仕事をしています」と言う言葉を不動産業界に明るくない人が聞くと、多くの人が仲介業をイメージするだろう。また、「賃貸の仕事をしています」という言葉も、おそらく多くの人が仲介業をイメージするだろう。しかし、賃貸の仕事は、当然ながら、賃貸仲介の接客営業だけではない。賃貸管理の仕事もあるし、オーナー獲得の営業や、賃貸物件を建設する提案営業の仕事もある。

 個人的には、不動産業界の仕事は、「不動産開発」、「不動産売買」、「不動産賃貸」に大別されるかと思う。「不動産開発」という仕事は、大手の不動産会社などが、用地を仕入れ、街の開発、商業施設などを開発する仕事だ。 

 「不動産売買」の仕事は、不動産を自社で買ってバリューを上げて、それを売るパターン。また、売買の仲介を行うことになる。

 「不動産賃貸」の仕事は、賃貸仲介、オーナーから依頼された賃貸管理、そして自社の賃貸物件の運用などがある。

 さらに業態のみならず、業種も様々だ。営業職もあれば、経理事務職もある。もっと言えば、集客目的のマーケティングの仕事もある。そう考えると、不動産の仕事というのは、一言では言い表せない。

 そう考えると、当然ながら、不動産の仕事に対しての向き不向きというものも、その業態や業種によって大きく異なる。

 冒頭に述べたように、仲介業務で成果を出している人が、開発の営業に転職で全く上手くいかなかったことは、このあたりに起因しているように感じる。そもそも、仕事内容が全く異なるのだ。

 賃貸仲介の営業期間は、ユーザーとやり取りを始めて、契約完了をして、引き渡すまで、およそ長くても1ヶ月程度である。しかし、不動産開発の営業などは、数年間かけて、仕事を進めていく。顧客との関係性もかなり長期的に構築していかなければいけない。

 私は仕事柄、不動産業界でもさまざまなジャンルのかたとお話をすることが多い。不動産開発のかた、不動産売買、売買仲介、賃貸管理、賃貸仲介のかたを見比べると、正直、全く別ジャンルの人たちである。

 もし、不動産業界内で、別のジャンルに転職される場合は、その違いを理解し、働き方をかなり変えていかなければ上手くいかないだろう。

 また、不動産業界に転職を検討されている方は、どの「ジャンル」に行くかを考えなければいけない。その「ジャンル」で、大きくキャリアは変わっていくだろう。

 とはいえ、賃貸仲介の仕事でなかなか成果が上がらなかった人が、別の「ジャンル」に行き、大きく成功したケースもある。前職では芽が出なかったものの、別のジャンルに行った途端に才能が発揮された事例もたくさんある。

 あまり大きな声では言えないが、もし自分の現在の仕事がどうしても上手くいかないかたは、「同業界の別ジャンル」にチャレンジしてみても良いかもしれない。同業界の転職だと、それなりにこれまでの知識は役に立つはずだ。

 また、なかには、どのジャンルに行っても、確実に成果を上げる人も少数ながら存在している。こうしたかたの共通点として、「素直で勤勉、そしてポジティブ」なところが、共通しているように感じる。まさに「郷に入れば郷に従え」ということだ。

 今後も「不動産の仕事」は、無くならないだろう。しかし、上記で紹介したジャンル(業態)は、淘汰されたり、変化したりする可能性は大いにある。その際に、個人であれ会社であれ、その変化に上手く柔軟に対応していくことが、とても重要になるだろう。


記事提供:南総合研究所


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