マニアックが業界を変革する時代【南総合研究所】

  1. 不動産事業者向けコラム

 最近は大手仲介会社、管理会社のM&Aが加速し、ゆるやかに業界の統合が進んでいるように感じる。よく中堅の不動産会社の幹部からもこういった声が聞かれる。「最近は大手の集客力には勝てない」、「とにかく物件の情報量が大手には敵わない。今後はどうしていけばよいのか」

 実際、こうした競争社会において行き着く先は、競合会社の淘汰である。競合数が多くても結局のところ、業界での競争が進み、大手が中小企業を呑み込み、そして寡占化していく。これが世の中の常なのかもしれない。

 個人的にも大手不動産会社の好調さには目を見張る。実際、増収、増益の会社が多く、その会社も資金が潤沢な印象だ。さらに、冒頭に述べたM&Aで中小不動産会社を多数、買収しており、拡大思考は強まるばかりだ。

 いっぽうの中小不動産会社は、なかなかこうした大手の勢いに押されているように感じる。特に、仲介業などは、顕著にこのあたりの影響が出ているように感じる。

 それでは、このまま大手不動産会社の寡占化が進んでしまうのであろうか?答えは「スグにはNO」である。ここが不動産業界の面白いところである。

 ひとつは、いくら業界の寡占化が進もうと、なかなか全ての記号を統合するのは難しいという問題だ。不動産業者は現在、約13万社存在している。大手の力が強くなっているとはいえ、完全に寡占化するのは、かなり時間がかかるだろう。

 さらにもうひとつは、中小企業は中小企業なりの独自の戦い方ができ、それがある部分では大手よりも成果を生み出すことができるということだ。言い方を変えると、大手にはできない方法で事業を推進することで、中小不動産会社独自の生き残りかたができるということである。

 最近、SNSでも不動産会社が発信する内容、コンテンツがマニアックになってきている。「防音専門の物件情報アカウント」、「大型ペット可の物件専門チャンネル」、「都心湾岸エリアを紹介するチャンネル」など、かなりマニアックなテーマを専門にして投稿している。

 さらに業界の知見を配信するチャンネルなども、しっかりと個人の考えや見解を述べているチャンネルが伸びている。「X」でも当たり障りのない投稿より、しっかり顔と名前を世間に出して、自身の意見を述べているアカウントのほうが伸びている。これも、大手不動産会社ではなかなか真似できないところだろう。

 とある会社では、こうしたマニアックなコンテンツ情報を社長自ら音頭を取り、SNSで発信を開始した。最初は、内容がマニアックすぎるが故に、まったく成果が上がらない状態だったが、数ヶ月が経つと徐々に問い合わせが増え始めた。数年経過した今では、このコンテンツのみで必要集客数を全て賄えるようになっている。

 さらに、とある会社では、独自のSNS発信を3年前に開始した。今や、そのSNS発信が集客の母体になっている。とはいえ、成果が出るまでに、3年経過している。なかなか心が折れそうになることもあったかと思うが、現在は、大きな収益を生み出せるようになっている。

 ちなみに、この事例のいずれも発信しているコンテンツは、なかなか大手には出せないものだ。マニアックな物件特集、社長自らの不動産トピックの見解発表などは、まず大手なら稟議通過すらしないだろう。

 ランチェスターの戦略というものがある。例えば、小さな企業が大企業と競争する際には、特定のニッチ市場に集中し、その分野での専門性やサービスの質を高めることで競争優位を築くことができる。

 これは、SNSの発信だけではなく、他の不動産業務でもいろいろと利用することができる。たとえば、極小エリア限定の集客戦略やマニアックな希望条件に対するサービス、そして特定のユーザー(ペット飼育希望、超富裕層)に対するサービス、さらにいえば、他では真似できない物件買取サービス、売却相談サービスなどもそうだ。ポイントとなるのは、繰り返すが「大手が真似できない」ということがポイントとなる。

 大手不動産会社が、「マニアックすぎて予算化できないもの」、「事業規模が小さ過ぎて、大きくスケールできないもの」、「成功するかどうかの指標や予測が立ちにくいもの」、「個の力が大きく影響するもの」。このあたりが戦略策定においてキモとなるところだろう。

 これからSNSや新規サービスを作ろうとしている不動産会社のかたは、是非参考にしてほしい。大手が真似できないサービスを作り、そこで大きな成果が得られれば、かなり強い収益基盤になるだろう。そしてそれは、長い将来を考えると、大手すらも凌駕していくサービスになり得るかもしれない。

 いっぽうでこうしたランチェスターの戦略ではなく、なんとなく新規サービスを開始したり、今まで通りの業務を行うことは、これからかなりリスクが高くなるだろう。中小不動産会社は、生き残るために、今回紹介した「生き残りの戦略」を常に検討し続けなければいけないだろう。


記事提供:南総合研究所


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