少し前まで不動産会社様に対して、よく「メール対応方法」なる研修を行っていた。問い合わせのほとんどがポータルサイトやホームページからのメールだったため、こうした研修には一定のニーズがあった。
当時、反響を獲得したユーザーに対しての1stメールの返信対応は、かなり不動産会社によって差があったように感じる。物件情報をリッチにし、担当者の自己紹介などをしっかりと行う不動産会社もあれば、かなり簡易的に一言、二言でメール返信をする不動産会社もあった。
また反響からの1stメールだけではなく、ユーザーからのリアクション後の返信対応もそれぞれの不動産会社によって差があった。即返信対応し、うまくアポイントに繋げる不動産会社もあれば、数日経過してようやく返信する不動産会社もあった。
メール返信の基本は、「情報をリッチにし、見やすくすること」、「即時返信すること」が基本だ。簡素的な対応よりも、問い合わせされた物件情報をしっかりと伝え、自社の強みを伝え、担当営業のプロフィールを伝え、そして、いかに返信をもらえるか、の質問文を考える。このあたりのテンプレート集などが、当時は複数の業務支援系の会社様でよく提供されていた。
今でも勿論メールでの対応がゼロになったわけではない。相変わらずポータルサイトからの問い合わせは、メール対応が基本だ。しかしながら根本的にユーザーがメールを使う機会は確実に減ってきている。
またこの数年で、不動産アプリなどのサービスも生まれてきている。こうしたサービスでの対応はアプリ内のメッセージ対応が基本だ。チャットをしながら、物件紹介を進めていく。こうした対応は、今までのメール対応とは大きく対応方法は異なっている。
ポイントは、いかにシンプルにチャットを続けていくかだ。メール返信で使う分量の多い文言などは、なかなかこうしたチャットサービスにはそぐわない。なるべく簡潔に返信し、ユーザーとのコミュニケーションを進めていくことが鍵になるだろう。
また、現在では、こうした不動産サービスとは別に、SNSでユーザーと直接やり取りするケースも増加している。TwitterやInstagramなどのDMを使ったユーザーのやり取りなどがそうだ。
こうしたSNSでのDMのやり取りにおいて不動産会社は、2つのいずれかの目的に向かって対応していかなけばならない。それは、「DM内のコミュニケーションのみでアポイントまで持っていくのか」、もしくは、「自社のコミュニケーションツール(LINEなど)へやり取りを移管させるのか」この2つの目的によって、不動産会社のSNSでのやりとりは変わっていく。
たとえば、LINEのLステップなどを導入し、しっかりと自動チャット対応ができたり、自社内で独自のコミュニケーションツールがある場合は、なるべくそちらに誘導していったほうが良いだろう。このためには、何パターンかテンプレを用意し、なるべく自社の得意領域に持ち込んでいくような仕組みを構築することが重要だ。
いっぽうで、そうしたサービスがない場合は、やはりSNSのDM等でかなりコミュニケーションを密にし、しっかりと顧客との関係構築をしていかなければならない。実際のところ、ユーザーからすると、DM内でのやり取りのほうがハードルは低いし、使いやすいかもしれない。
SNSでのやり取りの基本は、企業アカウントであれば、しっかりと「担当者として名乗ったうえで対応すること」だ。この「担当者の明示」は大きくアポイントの獲得率に影響を与える。
またコミュニケーションに関して重要なことは、「アポイントがほぼ確定してから個人情報を獲得すること」である。自社独自のサービスとは異なり、SNSのアカウントでは個人情報の開示に慎重になっているユーザーが多い。いきなりアポを組もうと、個人情報を聞き出すと離脱率は高まってしまうだろう。
不動産会社として「担当」の明示をする。しかしユーザーに対しては、いきなり個人情報を取る行為は控える。細かいことだが、こうしたことが割とSNSのやり取りから、具体的な商談を進めるうえで重要なポイントになるだろう。
おそらく今後もこうしたSNSでのDMやり取りは不動産事業でも増加していく傾向にある。以前のメール対応の研修のような「虎の巻」のようなものも業界内で生まれていくかもしれない。
もし社内でなかなかSNSのDMから商談を進められなくても、根気よく継続し、改善を図って頂きたい。自社独自の「勝ちパターン」を発見すると、それはとても大きな他社とのアドバンテージになるだろう。
記事提供:南総合研究所