街をPRする、という不動産会社の仕事【南総合研究所】

  1. 不動産事業者向けコラム

毎年各不動産ポータルサイトや情報サイトで「住みたい街ランキング」や「住みごごちランキング」などの街ランキングが発表される。こうしたランキングは、これはこれで興味深く、想定通りの結果だったり、自分では想定外だった街が上位にランキングされていて驚いたりと、なかなか面白い。また、こうしたランキングを見て、自分の住んでいる街についていろいろ考えてみるのも一興である。

 ちなみに、人間というのは、基本的に「土地」や「街」の話が好きなんだろうなと個人的に感じる。東京での飲みの席で私鉄沿線の乗客の特徴を話して、盛り上がることもそうだし、地元で隣町との優越のことを話して盛り上がることもそうだ。よくよく考えるといたる所で、「土地」や「街」の会話がされている。

 当然のことながら、土地には相場というものがあり、さらに言えば賃貸マンションやアパートには、賃料相場というものがある。いくら人気のある駅で希望通りの間取りの物件に住もうと思っていても、それ相応の家賃を払えなければ、もしくは、物件を買うための購入資金がなければ、住むことはできない。実際は、かなりなし崩し的にその土地や街に流れついて居を構えることになる人々が多いこともひとつの事実である。

 なんとなく通勤に便利そうなエリアを特定し、不動産会社に相談し、部屋を決める。特に、はじめて暮らすことになる賃貸物件は、かなり細かくエリアや街情報を調べるユーザーよりも、不動産会社から街を紹介され、それをベースに部屋を決めるユーザーのほうが多い印象だ。

 とはいえ、その街に決めた動機はどうであれ、会話のなかで自分自身の街について語ると、ほとんどの人々は、その街の「良い部分」について語る。その街に住んでみで気づいた街の魅力を語り合い、酒席などで盛り上がるのだ。特にそうした傾向は、年齢と共に比例して増えていく印象だ。

 職業柄、私はこうした街について語り合う機会が多い。そのなかで、自分自身の住んでいるエリアや街に対して悪く言う人は、殆どいない。体感的には90%以上の方が街の良いところを会話のなかで紹介する印象だ。「実際に住んでみると、こんな魅力があった」、「近所のこの店は、〇〇」といった具合に。

 いっぽうで、数少ないが、街についてマイナスのことを話す人は、年齢が若い方のほうが多いような気がする。たとえば、自分自身が何らかの夢を持って何かを成しえようとする若者は、自分自身の現状と将来の夢にギャップを感じる。活躍したい場所と現実の住まいとの距離が遠かったり、不便だったりすると、どうしても街に対してネガティブな印象を受けてしまう。しかし、年齢を重ねると、自分自身との折り合いをつけ始める。そして自分の住んでいる街に愛着が湧いてくる。

 「住めば都」とはよく言ったものだ。

 話は変わるが、不動産会社の物件紹介方法はこれまでと大きく変わってきている。今までは、ポータルサイトのみに物件を掲載していた手法から、多くのSNSツールに物件紹介動画を掲載して独自の集客ルートを確保する手法が増え始めた。

 さらにユーザーの傾向も、不動産会社に行って話を聞くよりも、実際にサイト上で物件情報を見たり、動画を確認したりして、現地待ち合わせをして部屋を決めるというユーザーが増加している印象だ。

 今後も「WEB上の物件情報の精度」は、よりクリアになっていくだろう。情報がクリアになればなるほど、不動産会社に来店するユーザーは減っていくことになることは間違いない。

 しかし、「物件情報の精度」は業界全体でより高まっているのに対し、「街の紹介」という視点で考えると、まだまだこのあたりの取組みを積極的に行っている不動産会社は少ない。不動産会社が独自に街の魅力や穴場などを紹介し、メディア化しているケースは数少ないのが現状だ。

 たしかに、「集客」という観点だけ考えると、「街紹介」は、直接的な反響獲得には繋がりにくい。それよりも物件紹介に振り切ったほうが、短期的な収益に結びつきやすいのは、間違いない。しかし、「ブランディング」という観点や、「やや中長期的なマーケティング施策」として考えると、街紹介はそれなりに効果のある施策だと感じる。

 該当の街を調べようと思ったユーザーに対して自社の認知を高めることができるし、こうした取り組み自体が、該当エリアに管理物件を持っているオーナーに対して大きなアピールにもなることもあるだろう。上手く集客や管理物件獲得と絡めることができれば、新しい集客導線になり得る可能性は大いにあるのだ。

 先程述べたように、ユーザーがエリアや街を選ぶ基準は、実際のところ、なし崩し的な要素が高い。もしこうした街の紹介などをしっかりと地域の不動産会社が訴求していけば、ユーザーの物件選定の基準は変わっていくだろう。また、こうした取り組みを多数の不動産会社が実施していけば、ユーザーの住みたい街の選定基準も変わっていくのではないだろうか。

 不動産会社の本質的な仕事として、街の魅力を伝え、そして街を活性化させるという大義な部分がある。

 なかなか問い合わせ増加までに時間がかかってしまうが、継続的に「街の紹介」を行い、しっかりと集客導線を確保していけば大きな結果が生まれる可能性もある。是非、改めて自社での「街の魅力」の発信について、できることころはないか検討してみてほしい。

 将来、酒席で街の話になった時、「あの不動産会社の街紹介サイトを見て」という言葉が聞ける日も近いのかもしれない。


記事提供:南総合研究所


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