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コロナ禍で変わりゆく接客スタイル
仲介の仕事のなかで、内覧はひとつの大きなポイントになる。当然といえば当然だが、今、現在もほとんどのユーザーが物件の内覧を希望する。オンライン内見の利用も増加傾向にあるが、主流は、自分の目で見て物件の状態を判断することが主流である。
最近は、コロナの影響もあり、なかなか店頭での接客も難しくなってきている。また、来店を希望するユーザーも減少傾向にあり、なるべく現地の待ち合わせでの内覧を希望するユーザーが多くなってきている。一昔前の仲介業務とは異なり、営業自体をユーザーに行うことが困難になっているのだ。
電話やオンラインの商談を経て、現地でユーザーと待ち合わせ、内覧する。結果が、吉とでるか凶とでるかは、事前のやりとりが左右するだろう。しかし上記に述べたように、なかなかユーザーと接点を持つことは難しい。そうすると、どうしても現地一発勝負になりがちになるのだ。
仲介の現場で、ユーザーの返答で厳しいのが、「急いでいない」、「ゆっくり探す」という返答だ。ある種の断り文句なのかもしれないが、この言葉を聴くと仲介担当者は、がっかりする。「良いものがあれば、いつでも」という返答も厳しい。このあたりをクロージングをしっかりかけられる仲介営業は、かなり少ないし、現在は、なかなかそこまでユーザーとの距離を詰められない。
このような時、ユーザーの期待度をどのように上げていくか。
重要となる物件掲載時の希少性
これは、いかにその物件の掲載時に、「希少性を出していく」かが大きな鍵になるだろう。
よく言われることだが、不動産の部屋には、世界で同じものがひとつもない。不動産というものは、当然動かせないもので、土地に根付いているものである。また部屋も、ひとつ隣の部屋に移動するだけで、眺望も雰囲気も変わる。ひとつ上の階に行くだけで、景色が抜けて眺望が広がる、なんてことはよくあることだ。
現在、ポータルサイトでは数限りない不動産情報が記載されている。数万件の物件情報に同じものは、ひとつもない。そう考えると、非常に他のビジネスと不動産業の違いが明白になるのではないだろうか。しかしながら、そうはいっても、ユーザーからすると、「どれも似たようなもの」に見えてしまっているのも現状である。「世界にひとつだけのもの」という意識は、あまり無いのかもしれない。
また、YouTubeやInstagramなどで、ひとつの物件を丁寧に取材し、アップしている動画も最近は増えてきた。お洒落な内装や間取り。充実の設備。たしかに魅力的に見える。しかしここにも、「これと同じものは、ひとつもない」という観点が、抜け落ちているケースが多々あるように感じる。
『これしかない!』と思わせられるか
冒頭の話に戻るが、ユーザーは、「あまり急いでなく」、「良いのがあれば」、というケースが多い。そのなかで、いかに成約率を高めるかと考えると、「これしかない」と思わせることが重要だ。
そうすると、いかに物件を「良く見せるか」というよりも、その物件がどれほど「特別か」をアピールしたほうが良いかもしれない。
物件の間取りや賃料、設備は、比較しやすいが、それ以外でも、眺望や水圧、雰囲気、音、周辺環境、など様々なポイントで独自性を打ち出すことができる。またこれをいかに上手く掲載や発信するかが、非常に重要になる。
試しにポータルサイトや物件動画などを覗いて見てほしい。カッコ良いな、豪華だな、もしくは安いな、と思う物件は多く掲載されているが、これは希少だな、一部屋しかないんだな、と感じる物件は意外と少ないものだ。
仲介の担当営業がゴリゴリと営業する時代が完全に無くなるわけではないが、おそらくこれからは、そうした掲載段階からの差別化が、成約率に比例していくだろう。「良く魅せる」ではなく、「貴重な部分を探し、そこをフューチャーする」という意識がこれからは、重要になっていくかもしれない。
記事提供:南総合研究所