賃貸業務のアウトソーシング化はどこまで可能なのか?【南総合研究所】

  1. 不動産事業者向けコラム

 最近、不動産会社からご相談を頂く内容のなかで「自社の業務を効率化したい」という要望を頂くケースが増えてきた。確かに多くの不動産会社の幹部のかたは、自社の業務に関して「効率的ではない」と感じることが多いようだ。たとえば仲介業務のなかでの物件の入力や追客。また管理業務でいえば、設備系のクレーム対応、月に一度のオーナー送金業務などそれぞれにある種の不満を感じている。「他社はもっと効率的に行なっている」、「他社は生産性が高いのに対して我が社の生産性はとても低い」

 こうした課題に対して業界では、オンライン契約の推進や賃貸業務のDX化などが推進されてきた。これにより、実際に仲介業務の内見手配や管理業務の契約手続きなどはかなり効率的になったのではないだろうか。しかしそれでも各社の幹部のかたは、「生産性が低い」と感じる方が多いようだ。確かに現場近くで業務を見ていると、多くの社内業務に指摘したくなるのかもしれない。こうした課題に対して、よく不動産会社の幹部のかたから「アウトソーシングの相談」を受けることがある。

 確かにテクノロジーの業務効率性を図った後、さらに社内の効率性を上げるために既存の業務をアウトソーシングするというのは、ひとつの最適な解のように感じる。実際に仲介業務、管理業務それぞれの業務の大半がアウトソーシング可能な状況になりつつある。仲介業務でいえば、ポータルサイトの入稿のための物件のピックアップ、入力業務、そして顧客の一次対応などが可能になっている。さらに内見の代行や契約手続きの代行までアウトソーシングすることも現実的に可能である。

 また管理業務も言わずもがなだ。基幹システムの物件入力から入居者の一次対応、そして設備修繕、定期巡回業務、さらには退去精算までアウトソーシングを行おうと思えば可能になってきている。そう考えると、賃貸不動産事業の業務改革として、テクノロジー、DXで解決できるところは優先して解決し、その他はアウトソーシング化してしまうことがひとつの答えなのかもしれない。実際にこうした取り組みによって各社員の業務改革が成功した事例をいくつか実際に見てきた。

 ちなみにこうした業務の生産性向上を進める前にに考えるべきことは、「不動産会社の本来の仕事」とは何かということである。皮肉なことに全ての業務をアウトソーシングしてしまうと、その会社の色や特徴は無味無臭となってしまう。

 「不動産会社の本来の仕事」の定義として、個人的な考えでは、仲介業務は集客方法の確立、お部屋探しのユーザーとの信頼関係の構築。いっぽう管理業務ではオーナーとのコミュニーケーション、物件の仕入れルートの開拓などがそうではないかと感じている。

 実際に仲介業務を行うなかで、集客ルートもなく、さらにはユーザーとの会話すらも無くなってしまうと、なかなか仲介業務としてはあまり特徴がない状態になってしまうし、さらに仕入れルートもなく、オーナーとのコミニュケーションも皆無な管理会社は、もはや管理業としての存在意義がない状態になるだろう。理想的に言えば、冒頭に紹介した「業務効率性が図れる業務は、徹底して効率性を上げ」、各社員が本来の業務に集中していくことがベストな状態なのかもしれない。仲介業で言えばポータルサイト以外の集客ルートを確立するためのマーケティング活動を行い、ユーザーの満足度を上げる紹介業務を行う。管理業では、物件の仕入れ業務を強化し、既存のオーナーと密なコミニュケーションを行う。まさに各社の幹部の方が思い描いている社内の様子に近い状態になるかもしれない。

 しかしいっぽうで長年、多くの不動産会社を見ていると、「内製化」を極限まで行い、それが理由で成功している不動産会社も存在しているという事実もある。たとえば仲介の内見の代行などのアウトソーシングを取りやめ、社内スタッフで徹底した内製化を行い、利益を増加させた仲介会社や、社内で室内施工ができる職人を雇用し、原状復帰や小修繕業務での利益を増加している管理会社などがそうだ。また、財務的にも、アウトソーシングを行い過ぎて、逆に販管費(外注費)が上昇してしまい、さらに先方のアウトソーシング会社から値上げを求められて、赤字に転じてしまったケースなども見てきた。そう考えると、全ての業務をアウトソーシングすることは、実際にはいくつかのリスクがあることも忘れてはいけないし、内製化を行うことで、自社の強みを見出せることも念頭に置いておく必要があるだろう。

 業務を効率化させたり、アウトソーシングするところはしていきながら、自社の強みを伸ばすこと。他社との違いを明確に打ち出し、その戦略を実行していくこと。今後、生き残っていく不動産会社は、他社との差別化をしっかりと図っていかなければいけないだろう。その選択のひとつには、「徹底した内製化」もあるのかもしれない。


記事提供:南総合研究所


不動産事業者向けのBtoBサービス情報サイト

不動産会社向けBtoBサービス情報サイト「ナレッジベース」です。今後は不動産テックや不動産会社向けサービスの導入事例を掲載していきます。また、不動産サービス関連のプレスリリースを毎日更新!ここに来れば不動産のサービスの全てがわかるようなサイトを目指します!

ナレッジベース

関連する記事