よくある話だが、全く同じ規模感、業務内容の不動産会社でも、その集客数や認知度に大きな差があったりする。また物件に関しても同様で、同じエリアや同じ経済条件でも、販売状況やリーシング状況が不動産会社によって異なることもある。さらに言えば、サービスに関してもそうだ。似たようなサービスでも、何故かサービスの広がり具合が異なったりすることもある。
このコラムでも何度かお話ししたが、企業の業績を上げたり、サービスを広げたりするためには、経営戦略をしっかりと立てていかなければならない。また戦略を実行できる企業の行動力とそれを検証する仕組みを構築しておかなければいけない。このあたりの戦略と実行が何よりも重要なのだが、最近は、それ以外でもライバル会社と「決定的な違い」を打ち出すことが重要ではないかと感じることが多々ある。
不動産会社の多くは、営業戦略をしっかりと策定し、顧客獲得を行っている。また、殆どの不動産会社は、自社サイトを立ち上げ、自社のサービスをアピールしている。最近では、SNSを立ち上げ、それを運用している不動産会社も多くいる。
しかし、「デザイン性」を重視する不動産会社は驚くほど少ない。
サイトひとつとっても、センスが抜群なサイトもあれば、どちらかといえば当たり障りのないサイトもある。またなかには、あまりセンスが良くないが故に、印象が悪くなってしまうサイトもある。
こうしたデザイン性は、不動産会社のブランディング思考が上位概念にあり、第三者に「どのように見られるか」がベースになる。よく言われるのが、コーポレートカラーやフォントの統一などがそうだ。このような統一性を持ちながら、第三者からも「センスが良い」、「オシャレだ」とみられることがデザイン性の醍醐味である。
ちなみに、販売物件のLPの多くが、高級感を打ち出しているが、デザイン的には大きな差がない。また多くの賃貸サイトでも、他の不動産会社のサイトと見た目的に大差がないように感じる。
しかし、最近では、こうした画一的なデザインとは異なった不動産会社も増えてきた。自社のイメージを決め、ひとつひとつの広告に対して、デザイン性を打ち出していく。そうすることで、他社に比べて、良い意味で印象が良くなる。
以前、ご支援していたとある不動産会社では、この「デザイン」というところを大変重視していた。その会社は物件の施工も行なっていたが、物件の利便性と同時にとにかくデザイン面を気にしていた。いくら使いやすい間取りでも、そこにデザインの統一感が無ければ、前に進めることはしなかった。
またサイトなども徹底的にデザインにこだわり制作していた。当時の自分からすると、なぜこれほどデザインに時間をかけるのか、検討を重ねるのか納得ができなかったが、今はその重要性をとても認識している。またその不動産会社には、専門のデザインチームがあり、全ての即販物をそのデザインチームが確認をしていた。自社内でこうした人材がいるおかげで、かなりデザインの統一感が生まれていたように感じる。
いっぽうで、とある不動産会社は、しっかりと自社のブランディング戦略を立てて、営業活動を行なっていたものの、あまりユーザーに浸透されていなかった。会社のレギュレーションに則って、コーポレートカラーを使った販促物を作っているものの、正直に言えばどことなく「ダサい」のである。ちなみにその会社には、デザイナーもいなく、自社の営業メンバーが販促物を制作していた。
一般のユーザーが抱く不動産会社のイメージとは異なるイメージを打ち出すのは、かなり骨の折れる作業である。しかし「オシャレだな」とユーザーに感じてもらうことは、とても大きなアドバンテージになる。
もし自社内でブランディングを進めている不動産会社があれば、全体の「ブランディング」だけではなく、その「デザイン性」もしっかりと注意して見ておかなければならないだろう。ベストは、自社内でデザインチームを立ち上げたり、専門メンバーを採用するのが一番効率的だ。しかし、予算的に難しい場合は、外注のデザイナーを使いながら進めていったほうがよい。逆に、自社内のリソースで「無理に」デザインをしない方が良いだろう。そもそも制作する提案資料や販促物に対して「デザイン」という概念を持っている営業メンバーは殆どいないのが現実だからだ。多少のコストは発生するかもしれないが、こうした細かい制作物ひとつのデザインに拘ることで、その印象は大きく異なる。
飲食や大手メーカーでは、当たり前のようにこの「デザイン」に対して徹底的に考え抜かれているが、不動産業界では、どうしても「インテリア」や「設計」などのような別ジャンルと取られてしまい、あまり議論はされていない。しかし、今後は、経営戦略を打ち出し、自社のサービスのブランディングを「デザインで表現」していく不動産会社が伸びていくのではないだろうか。是非、自社内のデザイン性を改めて見直してみてほしい。
記事提供:南総合研究所