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〜不動産会社のブランディングの重要性〜
ほんの数年前まで、たとえば賃貸仲介会社では、ポータルサイトにいかに効果的に掲載し、反響を獲得するかが重要だった。また賃貸管理会社では、物件を獲得する際に、いかにオーナーとアポイントを取り、自社をアピールするかが重要だった。
その際に、仲介会社では、あまり自社のホームページで仲介のサービスを紹介する仲介会社は少なく、また、オーナーさんにアピールするようなホームページや発信を重視している管理会社は、今ほど多くはなかったように感じる。
変わるユーザー動向
昨今、世の中のユーザーの動向は現在、大きく変わってきている。勿論、それは不動産に関わるユーザーでもそうだ。たとえば物件を借りるユーザーは、最近ではかなりの高確率で、問い合わせをする不動産会社のホームページやSNSの内容を確認する。オーナーも、最近はネットリテラシーが少しずつ上がってきて、管理を任せようと思う不動産会社の取組みをWEBでチェックする。はたまたBto Bの会社間同士の取り組みも、その企業のアピール力(発信力)を検証することで、取引の可否を決めたりする。
元来、不動産会社にとってこのような自社の取組を発信することは、非常に苦手である。最近でもホームページすらない会社が多く、仮にあったとしても会社概要ぐらいしか掲載していない企業が多い。
しかし、自社の取組をしっかり発信することで、事業の可能性を相当大きくすることができる。売上の向上に寄与することができるし、今まで付き合いのなかった企業と付き合うことができ、新しい視座を生み出すことができる。
たとえば、とある仲介会社では、複数の事業所を運営し、それなりの売上を上げていた。しかし、ホームページは、数年前のまま。店舗数すらまともに掲載されていない状態だった。そこで、その企業の部長は、一念発起し、自社サイトを刷新し、自社のマネジメントの取組や各営業メンバーにフォーカスを当てるような構成にホームページを変更した。また同時にSNSで、その取組を発信していった。半年程度経過すると、その会社の問い合わせは、大きく増加し、そして業界紙に取り上げれるようになった。
また、とある賃貸管理会社では、大家が自主管理を行う際のポイントを動画で定期的に発信し始めた。結果的に、皮肉にもこの動画を見て、その管理会社に管理を任せたいというオーナーの問い合わせが増加した。
このように自社の取組をどれだけ「アピール」するかで、全く異なる結果を生み出すことができる。
私は、日頃から様々な不動産会社のかたと話す機会が多い。話してみて感じることは、とても「面白い」取組みをしている会社が、まだまだたくさん存在していること。そしてそれと同時に、この取組みを、ほとんどの会社がうまく世の中に「伝えきれていない」ことを感じる。これは非常に勿体ないことだ。
自社のアピールが苦手な理由
なぜ不動産会社はなかなか自社のアピールをすることが苦手なのだろうか?
まずひとつは、そもそも企業に「発信できるもの」が無いということ。この場合は、経営の戦略から見直さなければならない。
またひとつには、企業で「発信できるもの」があったとしても、「どのように」発信すれば良いのかわからないこと。たとえば面白い企業の取組を行なっていることを自他共にわかっていながら、それが経営者同士の酒宴の席でしか発信できない。もしくは、ホームページに少し紹介しているケースなどがそうである。
さらに突っ込んで考えると、面白い取組みをして、かつ、それをどこにどのように発信すればわかっていながら、発信すべき人的「リソース」が足りないケースである。このケースが圧倒的に多い。
これは、不動産会社の組織体制に問題がある。不動産会社のとても原始的な組織体制として、新規を開拓する「開発部隊」、また問い合わせ、リアクションのある顧客を獲得する「営業部隊」、そして事務等を行う「バックヤード」に構成される。このような構成になると、広報機能を担当するのは、ほぼメンバーが兼務をするか、もしくは社長自身が発信していくしかない。しかし当然ながら、ブランディングは、なかなか片手間では上手くいかない。やってはみたものの、徐々に発信ができなくなるのは、そうした要因なのだろう。
うまくいかない場合、どうすれば良いのか。選択肢は2つである。
広報専門の人材
ひとつは、広報専門の人間を採用し、ブランディングを徹底することである。そのためには、基本の経営戦略から見直していかなければならない。採用なども多少苦労する可能性が高い。
他社との連携
もうひとつは、他者の力を借り、ブランディング力を高めることである。
とある不動産会社では、それぞれのSNSの発信に対して、ピンポイントで業務委託のメンバーに協力を仰ぎ、それを統括するメンバーと社長で二人三脚で進めていった。これによってランニングコストを抑えて、効果的に発信を行うことができた。大枠の戦略は、経営陣が練らなければいけないが、細かいところは、専門の人間が行うのでラクな部分が大きい。
まとめ
不動産業は、ある種の「信用商売」である。その「信用を得るため」には、繰り返すが、現在ではキチンと自分達の仕事を「発信する」ことで差が生まれる。 何かの商材を開発したならば、プレスリリースをする。また会社の取組をホームページにしっかり掲載し、日常の業務や物件の情報や私感などを、SNSに投稿していく。一度、是非、一年程度続けてみて欲しい。自分たちの発信が、自分たちの世界を変えることを実感することができるだろう。
記事提供:南総合研究所