不動産会社でパワポを使うことは、はたして意味があるのか。[南総合研究所]

  1. 不動産事業者向けコラム

 私はコンサルタントという職業柄、かなりの量のパワーポイント(Googleスライドも含む)を作成する。特に研修などの資料作成などになると、100枚程の作成になることもザラだ。

 こうした作成業務は、けっして楽しい作業ではない。一旦、作成に取り掛かってしまえば、流れに乗ることができるが、最初の一歩がとても億劫である。作成自体は慣れてはいるが、「取り掛かること」は、なかなか今でも慣れない。これは通常の事務作業とは全く異なる脳の筋肉を使うためかもしれない。

 ちなみに私は前職(ポータルサイト運営会社)に入社するまで、パワポの類は全く触ったことがなかった。そもそも、その前まで不動産会社にいたため、使う機会すらも無かったのだ。(また大学も殆ど出席していなかったため学生時代もパワポを触ったことがなかった)

 前職では、このパワポの経験がないことで、かなり苦労をした。とにかく社内の決済を取るために資料を提出しなければならなかったのだが、なにせ作成に非常に時間がかかっていたのである。

 当時は、こんな資料作成に時間をかけることに非常に懐疑的であった。何故、誰しもわかることをいちいち「カタチ」にしなければいけないのか。そしてそれを作ったところで、何かしらの決済などが約束されているわけではない。とにかく時間の無駄に感じたものだ。

 ちなみに、不動産会社で働いていた時は、仕入れ案件などは、稟議書に「物件概要」と「収支シュミレーション」を添付すれば事足りていた。また、購入稟議などは、相見積もりと購入動機、理由をテキスト入力したら完了だった。

 とてもわかりやすく、シンプルなものだ。パワポなどは何も必要ではない。

 ただ、今、こうして不動産会社様のお手伝いをするようになって、はたしてこのパワポ作成能力が必要かどうかを考えると、これがとても「必要」だと感じる。

 稟議事項などはさておき、組織の方向性や、提案事案のメリット、デメリットを「可視化」することは、とても重要である。そのために手っ取り早いのは、パワポでの共有である。

 とある不動産会社は、とても先端な取り組みを行い、事業拡大をしていた。しかし、なかなか会社の方向性の共通認識が進まず、離職が多かった。

 そこで、ある時期から、社内で、パワポでの資料作成、提案機会を増やした(最低限ではあるが)。それにより、社員の思考力が向上し、生産性も向上し、方向性も共有できるようになった。すべてパワポのおかげというわけではないが、第三者の目から見て、明らかに組織内で「何か」が変わったことは間違いない。

 また、パワポ作成は、「可視化すること」だけがメリットではない。「思考を整理すること」も大きなメリットである。

 頭の中のイメージを具現化することで、より自分の思考が整理される。ぼんやりと考えていたことをパワポに落とし込むと、自分自身のなかで納得感を増してくる。

  やはり、冒頭で述べた「不動産会社でパワポを使うこと」は、かなりメリットが多いだろう。

 それぞれの共通認識の確認で大いに役立つし、今後のための思考の整理にもなる。

 なによりも、「言わなくてもわかるだろ?」という業界独特の文化の弊害をクリアしてくれるのが大きい。

 ちなみに、不動産会社で、パワポが使われるシーンとして、店長会議などの管理職会議の報告、また案件の提案、新規事業の提案など、多岐にわたる。

 昨今、超大手のテック企業では、パワポの資料作成を取りやめにしている事例が多いようだ。

 それは、「資料作り」を仕事と勘違いしている社員が多いからだ。たしかに、浸透しすぎると、そういう弊害が生まれてしまうこともあるだろう。

 しかし、なかなか経営戦略が浸透しない、メンバーのポテンシャルが低い、かつ、社員の方向性がバラバラだったりする不動産会社に関しては、是非パワポを使うような文化にしてみて欲しい。驚くほど、効果が期待できる。

 人の「認識」は、他人と同じものだと思っていても、蓋を開けると、実際はそれぞれ異なることが多い。特に組織の方向性などは、最たるものだろう。一旦、時間を作って思考を可視化し、共有するという文化を醸成するために、パワポを使うように促してみても良いかもしれない。

 やりすぎは良くないが、一度試してみるのも手だ。


記事提供:南総合研究所

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