最近、よく不動産会社のかたからこうした質問を受けることが多い。それは、「不動産会社でSNSを使った集客は可能でしょうか?」、またこうした質問も多く受ける。「SNSで配信される物件動画などで反響を獲得できるのでしょうか?」
こうした質問は、都心部の不動産会社だけではなく、地方の不動産会社のかたからもよく頂く。確かに、最近の不動産業界のセミナーでも、このSNS運用についての題材で開催されることが多い印象だ。ただ、このSNSでの反響獲得に関して、現実的な部分を忘れてはいけない。実際、それなりの数の不動産会社様のSNS施策を見てきた身からして、その難易度は、相当高いことが、事実なのである。たしかに、ポータルサイトなどにそれなりに広告掲載料金を支払い、集客を行っている不動産会社からすると、掲載料金の発生しないSNS投稿は、かなり魅力的に見えるだろう。ましてや、そのSNS運用によって、集客が賄えるとなると、是が非でも成功させたいというのは、とても頷ける。しかし、私的な感覚だが、うまく運用させ、集客もできている不動産会社は、全体の5%にも満たないのではないかと感じる。
では、SNSで集客を成功させている不動産会社は、どのような体制で、どのような施策を打っているのだろうか。いくつか共通点があるので、ここで紹介してみたい。
・SNS運用に精通し、自発的に運用する社長、もしくはスタッフがいる。
トップダウンで社員に「SNSで集客を行ってくれ」と指示するだけでは、まず成功しない。また、こうした自発的に運用することに後ろ向きな社長やスタッフの会社に、SNS運用のコンサルタントを付けても、なかなか成功しない。かなり厳しいが、これが現実である。
逆に言えば、社長や社員自身が、自分の手でSNSを運用し、PDCAを繰り返し、改善させて行くことができる組織は、かなり成功率が高まる。実際に、SNSを運用すると、想像以上に最初は、再生数などが「伸びない」。こうした場合に、必要なのが、現場の修正能力、アイデア出しと、そのアイデアをカタチにする実行能力である。よくSNSは、「継続していれば、伸びるから」と言われるが、実際に継続運用しても、PDCAを回さなければ、改善はしないだろう。
ちなみに、こうした自身で改善ができる社長やスタッフがいる不動産会社にSNS運用のコンサルタントを付けると、かなり鬼に金棒である。インプレッション、継続率、再生維持時間などの分析をすることで、「勝ち筋」を見出すことができるのである。
・とはいえ、継続性も必要
勿論、上記のような運用条件が必要になるが、やはり継続し、運用し続けることも必須条件である。投稿する数が多いほど、当然、ユーザーの目に触れる機会は多くなる。投稿数を担保することで、再生するチャンスは広がっていく。
では、「どれほどの期間、SNS運用を続ければ良いか」と言われると、正直、明確な回答は難しい。しかし、少なからず最低でも一年は、必要だろう。しっかりと「反響を獲得する」というミッション達成には、これぐらいの期間がないと、なかなか厳しいように感じる。
いっぽうで、「再生数を増やす」ことや、「フォロワーを獲得する」という観点では、もしかしたら一年は必要ないかもしれない。特にショート動画などであれば、短期的にも「バズること」が可能だからだ。
ただ、いずれにしても、SNS運用は、数ヶ月単位で考えてはいけないことは、間違いないだろう。逆にほぼ「永続的に」運用するぐらいの覚悟がなければいけない。
・他社を真似ながらも、独自の視点や企画を打ち出せるか
継続的に反響数を獲得するためには、当然、一定のクオリティが必要である。そのためには、競合他社の投稿の分析をしっかりと行っていかなければいけない。しかし、難しいところが、それを真似したとしても、反響はなかなか獲得できないのが現状だ。ここで、重要なことは、他社にはない独自の視点を持つ投稿を発信しなければいけないということだ。インプレッション数や、CV率などを、事細かく見て、それぞれを改善することも重要だが、何よりも大切なことは、「企画力」である。面白い投稿や目に触れる投稿、そしてユーザーが「問い合わせをしたい」というような内容でなければ、反響は獲得できない。
そのためには、冒頭で述べたようなSNS運用に前向きで、そして企画を実行することができる社内のリソースが必要になるのだ。コンサルタントは、SNSの投稿を分析し、打ち手を導き出すことは、プロだが、当然のことながら、不動産業に関しては、素人である。このあたりの発想力は、プロの目線での発想力、企画発案力のほうが、確実に効果的である。
以上のように、「SNSで反響獲得する」というのは、一筋縄ではいかない。その成功確率は、かなり低いだろう。さらに言えば、かなり「面倒な作業である」。そう考えると、やはり相当な覚悟がなければ、手を出すことは避けたほうが良いかもしれない。しかし、「反響を獲得する」という目的ではなく、「自社のPRをする」という目的においては、SNSは大いに役立てることができるだろう。
改めて自社とSNSの運用目的を考えてみても良いかもしれない。
記事提供:南総合研究所