最近は人出も増加し、街の雰囲気はかなりコロナ前に戻っている印象だ。それに合わせて、飲食店や小売店も少しずつ顧客が戻っているとの声をチラホラと聞く。このまま人出が戻り、正常に経済が回っていけば良いと個人的には思う。
しかし、全てがコロナ前に戻ることがはたして良いことだろうか?リモートワークやDXの促進など、この数年の特殊な環境によって、さまざまな変革が生まれたことは否めない。また働き方だけでなく、ユーザーの購買体験も大きく変化したようだ。ひとつには、ネットショッピングの一般化があげられる。勿論、それまでも、ネットで購入をすることは、一般的ではあった。しかし、この数年で、ネット購入は、一気にスタンダードになったようだ。リアルな購買よりも、ネットでの購入を希望するユーザーが圧倒的に増加したことは、ひとつのトピックである。
では、不動産業界ではどうだろうか?オンラインの内見などは、コロナ禍になって大きく増加してきた。またオンラインの重要事項説明なども、かなり浸透したようだ。今後は、契約締結自体もオンライン可能になり、よりこの流れは進んでいくだろう。
しかし、この数年の不動産業界を見てみると、まだまだリアルの紹介業務のほうが強い。実際のところ、ユーザーとしては、リアルで物件を見たいし、周辺環境も確認したい、という声が大きいようだ。
たしかに、「内見をせず」自分自身が住む物件を確定させるためには、ある程度、ユーザーの不動産知識が必要かもしれない。また同時に、「内見をせずとも申し込みできる確証のようなもの」が必要なようだ。
たとえば、有名ブランドの缶ビールなどをネットで購入する時は、なんの抵抗感もなくネット購入できる。それは、「味が保証されている」からである。また、これまで買ったことのないナショナルブランドやハイブランドが提供している商品もネット購入に対してユーザーは、抵抗感がないだろう。それは、「ブランドの信頼度」が購入のハードルを下げているのかもしれない。
ところで中国ではライズコマースが、とても流行っているようだ。専門のスタッフがライブ動画で商品を紹介する。ユーザーはその動画を見て、質問等をしながら、検討し、購入していく。テレビショッピング的な要素もありながら、ネットライブのリアリティーも担保できる非常にシンプルでありながら、よくできた仕組みである。
日本でも大手デパートなどで、実施されているらしい。たしかに先に述べたように、品質が保証されるものでは、かなりライブコマースは、相関性が高いかもしれない。
今後は、こうしたライズコマースが、日本でもスタンダードになる可能性がある。日本は、商品自体のクオリティが高く、信頼感が保てる。責任のあるスタッフや紹介者が顔を出すことで、安心感を提供することができる。今後の高齢化社会にも適しているサービスではないだろうか。
また、こうしたライズコマースは、もしかしたら不動産の仲介のシーンで役に立つかもしれない。先程述べたように、ネットで購買するためには、「品質の保証」や「信頼感」が重要である。品質の保証の担保は、物件の動画配信でユーザーの質問に答えるようなライブ対応をすることで担保できる。また信頼感の担保に関しては、不動産会社のスタッフが顔を出し、しっかりと物件の紹介をすることで、担保ができそうだ。
空間を紹介するという不動産仲介業の行為は、かなりライブコマースとは相性が良いのではないだろうか。
近い将来、もしかしたらライズコマースが得意な不動産営業マンなどが誕生するかもしれない。物件の知識があり、しっかりと物件詳細や契約手続きなどを説明できる営業マンがライブ配信すると、申し込みが殺到する、みたいな世界が来るかもしれない。
おそらくそれは、これまでイメージされるステレオタイプのナンバーワン仲介営業マンとは、印象が違うだろう。
ライブ配信などで「売れる」不動産営業マンが登場した時、はじめて仲介業界が大きく変わったと言えるかもしれない。
記事提供:南総合研究所