不動産会社の経営理念にはどのようなものがあるか?【南総合研究所】

  1. 不動産事業者向けコラム

 最近は、以前にも増して、不動産会社のM&Aの話が水面下で盛り上がってきている。今後の日本全体の社長の高齢化に合わせて、後継者不足も徐々に深刻化するだろう。特に不動産業は、全業種のなかでも、最も社長の平均年齢が高いと言われている。

 今は、あまり感じないかもしれないが、数年先には、後継者不足のため事業継続を断念してしまう不動産会社が増加していくだろう。特に管理会社がそうなってしまうと、それに変わる新しい管理会社が請け負うまで、オーナー自身が物件を管理していかなければならない。

 ちなみに不動産会社といっても、売買仲介会社、賃貸仲介会社もあれば、賃貸管理会社も、オーナー業の会社も建売の会社もある。そのなかで、この数年、圧倒的にM&A市場で人気なのは、賃貸管理会社の案件だ。賃貸管理業は、ストックビジネスの典型的なモデルであり、それ故に、収益の安定確保が期待される。多くの不動産会社が管理会社の買収を望んでいる印象だ。

 しかし、管理会社のなかでも、市場価値(バリエーション)が高い会社とそうではない会社があるようだ。また、M&A成立後、上手くいくケースもあれば、そうではないケースもある。

 いくつかの事例を振り返ってみると、どうやら不動産会社のなかで市場価値の高い会社の条件はいくつかあるようである。

 ひとつには、冒頭で述べたようにしっかりとした固定収入があることである。まさに管理手数料などがそうである。

 また、他には決算書がクリアになっているかどうかや、法令遵守をしているかなども重視される。

 他には、各書類の保管、取引の保管状況なども市場価値に影響されるポイントである。

 上記がいずれもクリアして、かつ管理戸数が相当数ある賃貸管理会社の売却案件は、かなりの引き合いが予想される。

 また、それ以外にも、実際にM&A成立後、買い手、売り手、双方が良好に関係を進められる共通点として、「経営理念」をしっかりと作られているかどうかがポイントになるようだ。もっと言えば、経営理念からビジョン、そして経営戦略、事業戦略まで策定されていればよりベストだ。実際にそこまで落とし込みを行なっている不動産会社は、上場会社以外では少ない。

 ただ、実際に経営の局面において、この「経営理念」は、なかなか無視できない。しっかりと経営理念を打ち出している会社は、地力もあるし、実際に市場価値も高い傾向があるように感じる。

 では、不動産会社は、どのような経営理念を策定しているのだろうか?

 よくあるのが、「地域社会の貢献を打ち出している理念」である。ひとつの事例が以下の文である。「地域社会に対して貢献するために、地域のニーズに応える不動産プロジェクトを展開します。地域の発展や文化の継承に寄与する活動に参加し、社会的な責任を果たします。」

 また他の事例として、「誠実さを打ち出す理念」もある。取引の透明化や、顧客に対しての誠実なコミニュケーションの約束などがそうである。

 確かに、不動産取引において、こうした理念を掲げることは、ユーザーに安心感を提供できる。

 他には、「サービスの革新」を経営理念に打ち出している不動産会社もある。最近は、ご存知のようにAI生成により、様々な新しいサービスが生み出されやすくなっている。不動産業界も自社内で新規サービスを開発するケースも多い。

 さらには、「専門性」を打ち出す経営理念もある。当然のことながら、不動産業務において、知識や業務のプロフェッショナル性が問われることも多い。こうしたことを経営理念に打ち出す不動産会社もやはり信頼性を高めることができる。

 このような経営理念を策定し、事業を継続していていくと明確なその不動産会社の「あるべき姿」が浮かび上がる。

 最終的に後継者不足になり、事業売却になったとしても、しっかりと従前の「あるべき姿」をベースに新たな事業推進ができそうである。

 ただ、難しいのは、こうした経営理念をどのように作るかということと、また作るタイミングである。

 1名、2名の会社では、策定してもしなくてもあまり変わらないように感じるかもしれない。また、逆に従業員が数十人になった際に、無理に作ろうとすると、社員の風当たりが強くなりそうである。

 しかし、こうした企業理念があったほうが良いかどうかといえば、やはりあったほうが良いのだ。たとえ、1名、2名の不動産会社でも、それを策定することで、採用時に役立つこともあるし、数十人の企業でも、今後の地盤固めになり、従業員を一枚岩にするチャンスである。

 また不動産会社のPRにも、経営理念は、効果を発揮する。何らかの新規サービスを発表する際に、自社の経営理念を発信する。それにより、企業の方向性とサービスの相関性をしっかりとユーザーにアピールすることができる。

 また、経営理念を持つことは、同業者とのネットワーク構築することにも、後押ししてくれる。経営理念に賛同し、協力する他社も多く存在していることも見逃せない事実だ。

 なかなか、策定するには、骨が折れる作業かもしれないが、経営理念をまだ策定していない不動産会社の経営者様は、改めて自社の理念策定を検討してみても良いかもしれない。

 逆に言えば、こうした経営理念がないと、企業が道に迷った時に、その行先がわからず、方向性が定まらない可能性もあるのも事実なのだ。

 経営理念は、経営者のアイデンティティに強く影響される。今一度、自社の存在意義を考えてみても良いかもしれない。


記事提供:南総合研究所


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