先日、他業種のかたとお話ししていた際に、YouTube動画配信についての話題になった。そのかたはとある業界の時事ネタやニュースなどをYouTubeで動画配信しており、それなりの(数万人)の登録者数を誇っているかただった。そのかたが配信している内容自体は業界的にも、コンプラ的にも問題なかったのだが、ある時ふと自身の公開動画が全て非公開になったそうである。理由は、単純に配信を担当しているメンバーの操作ミスだったそうだが、その人は、その事を聞いた当初は、冷や汗が止まらなかったらしい。当然と言えば当然だ。これまでコツコツと積み上げてきた動画コンテンツがいきなり全て世の中に公開されなくなると、肝を冷やすのは間違いない。彼はまずこう思ったそうだ。「アカウントがBanされたのでは」と。ただ、先程も述べたように原因は、単純な操作ミスだったので、すぐに事なきを得て安心はしたようだったが。
またとある別のYouTube動画配信者のかたと話をしていた際には、こうした話を聞いた。そのかたは、とある業界の時事ネタを纏めて動画配信し、収益を得ていたそうだが、ある日突然、収益化がストップしたらしい。詳しくは紹介できないが、どうやら動画の配信内容というよりも、配信方法(形式)に問題があったようで、これまでそれなりの収益を上げていた動画コンテンツは、いきなり0円の売上げになってしまったようだ。
こうしたことは、YouTube動画配信だけの世界ではない。不動産会社、特に仲介会社でも起こりえることだ。
ある日突然、ポータルサイトから仲介会社宛てに連絡が来た。その仲介会社にとってポータルサイトからの集客は生命線だ。そのポータルサイトからの連絡内容は、「掲載している物件内容に違反がある可能性がある」というものだった。急いで原因を追求し、対応したことでこれも事なきを得たが、もしこの対応を疎かにし、さらに数度掲載違反を繰り返すと、ポータルサイト側からは、「掲載停止」の処分を受けてしまう。そうすると、仲介会社にとっての集客の生命線は絶たれ、事業継続すら困難になってしまう。
またSNS配信をしている仲介会社が、プラットフォーム側から指摘を受けることもある。配信内容が過激だったり、誹謗中傷が含まれると、こちらもプラットフォーム側から配信停止の処分、もしくは酷い場合は、アカウントを凍結(アカバン)される可能性もある。難しいのは、配信者側が意識的にこうした攻撃的な配信を行ったつもりではなくても、プラットフォーム側が攻撃的だと判断すると、一度は何かしらの措置を受けてしまうということだ。
ちなみに、仲介会社で広告を「完全に自社発信で行う」ということは、厳密的に言えば100%不可能である。仲介会社は、ポータルサイトという「プラットフォーム」に掲載することで集客ができる。もしくは、InstagramやTikTok、YouTubeなども、その「プラットフォーム」を使って発信し、集客を行う。
しかしながら、ポータルサイト側が掲載NGを出すと、仲介会社はポータルサイトに掲載ができなくなるし、さらに言えば、SNSを運営するプラットフォーマー側がその仲介会社の配信を拒否すれば発信はできない。実際のところ、こうしたケースは少ないかもしれないが、何かの拍子に停止措置などのようなことが発生すると死活問題になる。
それでは、こうしたリスクを回避するために自社サイトやLPなどを強化すれば良いのではないかという意見もある。確かに一見すると、自社サイトやLPは、プラットフォーマーがいないと感じるかもしれないが、実際はGoogleの検索軸が全てを握っていると言っても過言ではない。
とある会社では、ポータルサイトを利用せず、自社サイトの集客だけで相当数の反響を獲得していた。同業者から見ると、とても羨ましい限りだ。ポータルサイトに高い広告掲載料を支払う必要もないし、何よりそこまで制限はない。また、SNSなどで熾烈なマーケティング戦争を勝ち抜く必要もない。自社サイトからの集客はまるで天国のように感じるだろう。
しかし、実際は自社サイトの運営も一筋縄ではいかない。実際の現場は、ポータルサイトの掲載業務よりもっと過酷な業務である。Googleにはペナルティ措置というものがあり、一旦その措置を受けると検索順位が一気に下がる。そしてそれを解消するために、かなりの時間を要する。
このようなことを考えると、我々はすべからく何らかのプラットフォームに広告掲載していることがわかる。いくら自社には集客力がある、と自信を持っても、結局は何らかのプラットフォームに広告をしていることになるのだ。
重要なことは、こうしたプラットフォーム側のルールをしっかりと把握して広告掲載を行うこと。そして、ひとつのプラットフォームに全ての集客を頼らないことだ。何らかの保険を集客活動にも設けておいた方が良いだろう。
今後も新しいプラットフォームが生まれていき、そしてそれに対応した広告活動を仲介会社が行なうだろう。今後も、柔軟に先方のルールに対応しながら、リスクヘッジも同時に考えることを忘れてはいけない。
記事提供:南総合研究所