これからの不動産広告の可能性を秘めた物件ストーリーという概念【南総合研究所】

  1. 不動産事業者向けコラム

この数年で不動産会社のSNS集客は、かなり一般化されるようになった。

勿論、市場全体を見ると、今でも、部屋探しの集客のメインは、ポータルサイトからの流入がメインである。しかし、そのポータルサイトの集客を、静かに追随するようにSNS集客が台頭してきている。

 SNS集客も、以前はFacebookから始まり、今はTwitterから、そしてSNSのなかでも圧倒的な主流となりはじめているのが、Instagramだ。それに追従しているのが、TikTokだろうか。さまざまなプラットフォームを変えながらも、SNSから不動産会社に問い合わせをするユーザーは増加を続けている。

 ちなみにこうしたSNSでの広告を上手く使っている不動産会社は、おもにポータルサイトでは説明しきれていない物件情報の掲載を行うことが共通点としてあげられる。特にショート動画などの編集構成などは、SNSならではの手法だろう。

 ところで、少し前に、企業や商品のストーリーの広告効果の威力について実感した出来事があった。

 とある企業では、なかなか企業の知名度を上げることに苦労していた。そうした課題を解決するために、創業時の思いや、沿革を社長自身に語ってもらいそれを動画コンテンツにし、SNSで発信をした。また会社の各部署の仕事をする風景や、そこで働く人々のインタビューもコンテンツ化した。これにより、企業の認知度は向上し、それが採用効果に表れるようになった。

 こうした取り組みは、中小企業だけが行なっているわけではけっしてない。トヨタの実施している「トヨタイムズ」などはまさにその好例だろう。

 企業自体のストーリーではなく、商品のストーリーなどもユーザーの共感を非常に得やすい。

スタートアップ企業は、自社の商品の思いや、ローンチの過程などをコンテンツ化し、それをうまく広告にしているケースが多い。特に商品ストーリーに関しては、その素材の選定基準や作り手の思いを、しっかりと作り込めば作り込むほど、効果は高い。

 それでは現在、不動産業界での広告手法はどうだろうか?

 ポータルサイトの掲載ではなかなかそうした商品ストーリーを伝えることは、難しい。そもそもポータルサイトの機能は、情報のプラットフォームとしての機能だ。こうしたプラットフォームに、ひとつひとつの商品ストーリーを組み込んでいくことは、そもそもの機能とは異なっていくのかもしれない。

 いっぽうで、SNSでの発信はどうだろうか。YouTubeなどでは、少しずつ不動産会社自体のストーリーの発信や社長が前面的に表に出て、発信することが増えてきた。しかし、なかなか一般化していない。

 また、物件自体の商品ストーリーの発信に関して言えば、殆どまだ浸透していない。唯一、実施している領域だと、新築分譲マンションだろうか。しかし、どちらかといえば、ブランド認知の目的要素のほうが高いような気がする。

 実際に物件を企画するうえでのこだわりや、対象物件に対してユーザーに伝えたいことを明確にコンテンツ化している不動産会社は、今のところ皆無である。また、リノベーション施工だけではなく、中古物件のバリューアップや管理体制などを細かくコンテンツにしている取り組みも、あまり見られていない。

 不動産は、単純に商品が一物一商品のため、制作に時間がかかったり、コストが見合わない問題もあるだろうが、それなりに工夫をしていけば、うまく対応できるかもしれない。

 今後は、不動産という商品自体のストーリー性が非常に問われる時代が来るだろう。

その際にどれだけこうしたストーリーを、上手くユーザーに伝えていくのかが、重要になってくるかもしれない。

 もし今後、新築を企画する際や、中古物件を仕入れ、リーシングを行う際は、検討してみても良いのではないだろうか。また仲介会社でも、管理会社にヒアリングしながら、物件ストーリーを構築し、発信していっても面白いかもしれない。

 これからは、情報量だけではなく、その情報の質が大きく問われることになるだろう。


記事提供:南総合研究所


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