よく他業界のかたから「不動産賃貸業界で今後伸びるコンテンツ、サービスはありますか?」という質問を受けることがある。別の他業界のかたから見ると、不動産業界というのは、未知の領域で、かつかなりアナログな業界に見えるらしい。確かに、不動産会社の数も多く、有象無象のプレイヤーが多い不思議な業界に見えてしまうのは、ある意味致し方ないことかもしれない。しかしながら、実際、不動産業界はかなりDX化も進んでいるし、多くのサービスは、コンテンツが年々生まれてきている。実際のところ、長く業界に身を置いていると、今後は、新規のサービスというのは、生まれにくいのではないかと思うほど、多くの新規コンテンツがリリースされていると感じる。
しかしながら、そうしたなかでも、まだこれから伸びていく、そして可能性のあるコンテンツや領域は存在しているように感じる。今回は、2024年以降、賃貸業界に絞ったうえで、成長が期待できる領域やコンテンツを紹介してみたい。
・外国人に向けたお部屋探しの対応サービス
コロナ禍が終わり、外国人の方の流入が大きく復調している。街を歩いてみても、たくさんの海外からの旅行客のかたを見かけるようになった。それと同時に、海外からの留学生や就労者のかたも年々増加してきている。
しかしながら、賃貸仲介の現場のかたがたの話を聞くと、かなり外国のかたの部屋探しのサポートは、大変なようだ。悲しい現実だが、実際に外国語に対応できる賃貸仲介会社は、驚くほど少ない。英語などはまだしも、中国語やその他の言語の対応になると、しっかりと対応できる仲介店舗は、数が相当限られてくる。また言語対応しながら、商慣習の説明や、適切な物件紹介、そして契約内容の説明までほぼ完璧にこなせる仲介会社は、もっと絞られてくるだろう。
現在、こうした海外のかたからの対応をシームレス化しようと、いくつかの新規サービスがリリースされている。こうした新規サービスの特徴的なところが、「国内における対応」のみならず、「海外の集客段階からの対応」もサービスインしているところだ。わかりやすい事例だと、「海外のかた向けの日本国内物件のポータルサイト」などがそうだ。今後、こうした外国人向けのお部屋探しのサービスは、より需要が高まっていくだろう。
・高齢者向けの賃貸サービス
この数年で高齢者のかたに対しての賃貸物件の提供に対しての考え方は、業界で大きく変化した。数年前までは、「ハードルの高い入居条件」のひとつとして業界で捉えられていたが、今は、どちらかといえば、「解決しなければいけない問題」としても、業界全体で捉えられている。
実際に、現在もこうした高齢者向けのお部屋探しのサービスを提供されている不動産会社様は、多く存在はしている。しかし、問題となるのが、高齢者のかたの部屋探しのニーズはあっても、それを受け入れる体制がないことに問題があるようだ。
多くの問い合わせを頂いても、紹介できる物件が少ない。要は、オーナーや管理会社が高齢者に対して難色を示している、というところが問題のようだ。現実的に賃貸物件運営の面では、瑕疵のリスクなどがあり、後向きになってしまう理由があるのも事実だ。
しかしながら、当然のように日本の高齢者人口は増加し続ける。全ての高齢者が持ち家を持っているわけではなく、またサ高住や老人ホームに入居するわけではない。そう考えると、高齢者向けの賃貸住宅の提供は、今後も業界のみならず、日本にとっても重要な問題になるだろう。
・防音部屋の提供
コロナ禍の際、国民全体が自分の部屋にいる時間が圧倒的に増加した。その時に多くの管理会社の頭を悩ましていたのが、「騒音のクレーム」だ。残念ながら、多くの日本の単身者用の賃貸物件は部屋が狭く、壁が薄い。そうすると、騒音問題が発生してしまう確率がかなり高い。
こうした音の問題を解決するために、楽器演奏可能な防音仕様の物件の開発を行っている不動産会社が存在している。実際、こうした楽器可能、防音仕様の物件は、かなりの人気で、相場よりも高くてもすぐに入居者がついているようだ。今後もこうした物件の人気は継続していくだろう。
ポイントとなるのは、こうした物件を「新築」として提供するのか、「リノベーションを実施」して提供するのか、それとも「既存物件を簡易的に防音対応をすること」で提供するのかが、ポイントとなりそうだ。現在は、新築、リノベーションでの提供がメインになっている。もし今後、多くの、所謂「普通の」賃貸物件を防音仕様にすることができる安価なシートや、簡易設備が開発されたら、かなり面白いコンテンツになり得る。もしかしたら、現在こうした製品はリリースされているかもしれないが、まだ一般的ではないため、期待が持てる。
この他にも、NFTやトークンと賃貸物件との掛け合わせや、趣味に振り切った仕様の物件提供など、今後伸びる可能性の高いコンテンツは、多くある。2024年以降の賃貸業界で、どのようなコンテンツが伸びていくのか、そしてどのような新規サービスが生まれるのか楽しみである。
記事提供:南総合研究所