最近になって、少しずつ世の中は平常時に戻りつつあるようだ。今までテレワークがメインだったが、徐々にリアルの出社の比重が増えているような印象を受ける。勿論、不動産業界もいわずもがな、である。最近は不動産テックなどの盛り上がりで、だいぶ遠隔でできる業務も増えてきた。ただ、それでもやはり、顧客とは、相対してリアルで商談したほうが成約率が高いという現実もある。いずれにしても、しばらくは、リアルとオンラインを上手く使いこなして仕事をしていかなければいけないだろう。
さて、そんななか、最近、不動産会社の業務改善の仕事依頼を受けることが多い。
リアルでのコミニュケーションが増えてきている今だからこそ、改めて社内業務を見直していくのも頷けることだ。実際、全体の業務を改めて見直してみると、意外と「これ、意味があるのか?」とか考えさせられる業務が多いことに気付かせられる。
今回は私がコンサルタントをしているなかで、特に無駄(もしくは改善すべき)に感じる業務をまとめてみたい。
目次
無駄(もしくは改善すべき)に感じる業務
1.社内打ち合わせ
社内の打ち合わせ量は、全くゼロにはならないが、それでも必要以上に打ち合わせを入れる必要はない。不動産会社が向かうべき相手は、顧客である。社内業務をシンプルにしていくことは、業務改善の第一歩だ。特に、打ち合わせや会議が形骸化している場合は、その会議の意義と目的を、もう一度、定義づけしたほうがよい。
また、打ち合わせ自体の時間も見直すべきである。実際のところ、よくよく精査してみると、1時間も必要としない打ち合わせが世の中の大半である。特に数字の確認などは、事前に目を通しておけば、15分程度で終わる。また、定例などの打ち合わせも30分程度で終わらせても問題はないだろう。
ちなみに、会議のための資料作成にやたら時間を取られるケースも多い。こうした資料作成時間もなるべく短縮するような取り組みを導入したほうが良い。たとえば、日次で各数値をしっかりトラッキングできるように店舗や部署でルールづけを行う。会議では、その統計したデータを共有するだけにしておくようにする。店長が会議前に残業をする必要がないようにしなければいけない。
2.営業メンバーへの「教育的指導」
数字の達成できない営業メンバーへのヒアリング、および「教育的指導」も大きく時間を割けられているもののひとつだ。(「教育的指導」を言い換えれば、部下へのお説教の時間)
あまり大きな声では言えないが、この「教育的指導」を実施すれば、数字が回復すると思いがちな上長が不動産業界では圧倒的に多い。たしかにモチベーションで大きく営業数字は左右するが、まず最初に考えなければいけないのは、「誰でも数字目標を達成できる仕組み」と、「メンバーへの技術的なマニュアル提供」である。モチベーションは、残念ながらなかなか全員が長期間、維持できるものではない。いかに仕組み化をし、営業技術を高めるかを優先すべきである。
3.ゼロからの書類作成
多くのかたが経験したことがある感情かもしれない。何らかの書類を作り終えた後で、「あれ?この書類、〇〇さんが持っているよ」と言われた時の絶望感を。
こうした契約書類、覚書の雛形がないと思い込んで、ゼロから書式を作成する不動産会社が、圧倒的に多い。実際のところ、同様の書類が社内にあるにもかかわらず、同じような書類をまた作ってしまう。当然、社内でしっかりこれまでの書類や書式を統一して保管していればこうした無駄な作業は発生しない。しかし実際は、各店舗や部署によって使われている書類、書式がうまく管理されておらず、バラバラなケースが多いのだ。
4.その場凌ぎのリーシング対策
管理物件を保有している不動産会社の場合、空室が多くなると、慌ててリーシング対策会議を行う会社が散見される。たしかに危機感を持って、こうしたリーシング会議を行うのは、間違いではないが、できればきちんとルール化したいというのが、本音のところだ。
フローとして、空室が発生したら、その空室期間によって打ち手をあらかじめ決めておいたほうが良いだろう。
空室が発生し、オーナーから火のついたような電話がきて、慌ててリーシング対策会議を実施する。なんて会社がかなり多いのではないだろうか。
このように、ほんの少しの見直しで、業務は大幅に改善できる。ベースは、いかにユーザーやオーナーとの信頼関係構築のコミュニケーションに時間を作るかだ。実際、現場で話を聞いていると、こうしたことに気付いている現場スタッフが多い。しかし、なかなか声を上げることができないのは、やはり企業文化が原因なのだろうか。
「やらなければいけない業務」だが、「テクノロジー」で解決したい、もしくは解決できる業務
また、上記の内容とは少し異なる「やらなければいけない業務」だが、「テクノロジー」で解決したい、もしくは解決できる業務が、以下の3点である。
1.物件入力
2.追客
3.預かり賃料送金業務、オーナーレポート業務
この3点、いずれも実施しなければ、もちろん売上も増えないし、企業の信頼度も落ちてしまう業務である。当然、物件入力をしなければ、新規反響は来ない。追客をしなければ、売上の底上げは、図れない。送金業務、レポートは、不動産管理業の大きな義務だ。
しかしながら、この3つの業務は、あまり人の手をかけたくはない業務である。どちらかといえば業務の内容は、単調で、作業的要素が大半を占める。このような業務こそ、テクノロジーで解決すべき業務なのだろう。
賃貸不動産会社運営になくてはならいない業務
以上のように、整理すべき業務、自動化できうる業務を、紹介したが、逆に、賃貸不動産会社運営になくてはならない業務もある。
・顧客対応、オーナー対応
・日常的に売上確認を行う業務
・体系化した業務フローの策定と実施確認
・ベースとなる書類データベースの作成
・効果的な会議体の運用
このあたりが、事業としてしっかり運営していくために必要な業務であり、ツールである。もっといえば、このあたりを整備していけば、一気に生産性は向上する。
まとめ
売上を増やそうとすると、業務を増やそうとする意識になる。ある部分では間違いではないが、まず「省く」という視点を持つことが大事だ。
「省く」ことで、時間の余裕が生まれ、前向きに売上を増やす施策を実行することができる。
繰り返すが、一番の理想は、いかに顧客接点を作る時間を確保することができるかである。
今一度、社内の業務を見直してみても良いかもしれない。
記事提供:南総合研究所