世の中にある不動産データを徹底整理。種類と活用方法をまとめてみた【南総合研究所】

  1. 不動産事業者向けコラム

 近年、不動産業界では「データ」を活用したサービスが急速に増えている。以前から不動産情報サイトや査定サービスなどは存在していたが、ここ数年はAIの発達によって状況が大きく変わり始めている。大量のデータを収集・分析し、それをユーザーや不動産会社が活用しやすい形に変換する技術が飛躍的に向上したからだ。これまではデータを集めるだけでも多くの時間やコストが必要だった。しかし現在では、AIによる情報整理や分類、要約、予測技術の発達によって、これまで埋もれていたデータにも価値が生まれている。不動産業界はもともと情報産業とも言われるが、その流れはさらに加速している。そこで今回は、改めて「不動産データにはどのような種類があるのか」を整理し、それらのデータを活用したサービスにはどのようなものがあるのかを考えてみたい。

 まず最も基本となるのが「物件データ」である。所在地、面積、間取り、築年数、構造、用途地域、価格、賃料、設備、写真、間取り図など、多くの人がイメージする不動産情報がこれに該当する。不動産ポータルサイトや仲介会社のホームページに掲載される情報も、この物件データが中心となる。近年では設備情報だけではなく、日当たりや眺望、騒音、周辺施設、ハザード情報なども含めた詳細データとして管理されるケースも増えている。

 次に重要なのが「登記データ」である。土地や建物の所有者、面積、地目、権利関係、抵当権など、不動産の法的情報を示すデータである。不動産取引では欠かすことのできない情報であり、近年では大量の登記情報を分析することで、所有者の傾向や法人の不動産保有状況、相続の可能性などを推測するサービスも登場している。

 さらに「地図・位置情報データ」も重要である。住宅地図や航空写真、衛星画像、地形図、用途地域、都市計画区域、道路情報、インフラ情報などが含まれる。GIS(地理情報システム)の発達によって、様々な情報を地図上で重ね合わせて分析できるようになった。例えば、「駅から徒歩10分以内」「洪水浸水想定区域外」「商業地域のみ」といった条件検索も、この位置情報データがあるからこそ実現できる。

 価格データも欠かせない。売買価格、募集価格、成約価格、賃料、募集賃料、賃料改定履歴、公示地価、基準地価、路線価、固定資産税評価額など、多くの価格情報が存在する。価格データは査定だけではなく、市場分析や投資判断にも利用される。AIは大量の価格データから類似物件を抽出し、適正価格や将来価格を推計することも可能になってきた。

 取引データも重要な情報である。いつ、誰が、どの価格で購入したか、売却までどのくらい保有したか、どの時期に市場へ流通したかなど、実際の流通履歴に関するデータである。このデータを分析することで、地域ごとの流動性や売れやすい価格帯、販売期間なども見えてくる。

 ちなみに人口・世帯データも不動産との関係が深い。人口増減、高齢化率、世帯構成、転入転出、外国人比率、所得水準などの統計データである。不動産需要は人口と密接に関係するため、このデータは開発や出店戦略、投資判断などで非常に重要になる。近年では将来人口推計まで含めて分析するケースも増えている。

 さらには経済データも見逃せない。金利、住宅ローン金利、物価、賃金、雇用、企業数、新設法人、倒産件数などである。一見すると不動産とは関係がないようにも思えるが、不動産市場は景気や金利の影響を大きく受けるため、これらのデータは今後の市場を予測するうえで重要な指標となる。

 また建物データも近年注目されている。建築確認情報、検査済証、修繕履歴、設備更新履歴、耐震性能、省エネ性能、管理状況などが含まれる。今後は建物のライフサイクル全体をデータで管理する流れが進み、修繕提案や資産価値向上にも活用されるだろう。また、洪水、津波、土砂災害、液状化、地震危険度、浸水履歴などの災害データも住宅購入や保険、融資判断、管理業務に活用される場面が増えている。

 さらに近年価値が高まっているのが生活データや企業データである。スーパーや病院、学校、飲食店、治安、交通量などの生活利便性データに加え、企業の所在地、事業内容、財務状況、不動産保有状況、移転履歴なども営業支援やCRE戦略に活用され始めている。企業を起点として不動産を分析するという考え方は、今後さらに広がっていくだろう。

 では、こうしたデータを活用するとどのようなサービスが生まれるのだろうか。代表的なのはAI査定サービスである。大量の価格データと物件データを学習し、瞬時に査定価格を提示するサービスはすでに一般化し始めている。また、不動産投資分析サービスでは、利回りだけではなく人口動態や賃料推移、将来予測まで組み合わせて投資判断を支援するものも増えている。営業支援分野では、登記情報や企業データ、移転情報などを分析し、売却可能性や営業優先順位を予測するサービスも登場している。

 開発用地探索サービスも拡大している。用途地域や道路条件、容積率、人口動態などをAIが分析し、開発候補地を抽出する仕組みである。賃貸管理分野では、家賃査定、空室予測、退去予測、修繕提案、設備更新時期の予測などにもデータが活用されている。さらに、契約書や重要事項説明書、図面などの文書をAIが読み込み、要約やチェックを行うサービスも増えている。これも広い意味では不動産データを活用したサービスと言える。

 今後はこれらのデータが単独で利用されるのではなく、複数のデータを組み合わせることが当たり前になるだろう。 

 物件データだけでは見えなかった価値も、人口データや企業データ、災害データ、経済データを重ね合わせることで、新たな発見につながる。不動産会社にとって重要なのは、「データを持っていること」ではなく、「データを意思決定に活用できること」である。同じ情報を持っていても、それを分析し、営業や管理、開発、投資、経営に結び付けられる企業が競争力を高めていくはずだ。AIの進化によってデータ取得のハードルはさらに下がる。一方で、データそのものよりも、「どのデータを組み合わせ、どのようなサービスとして提供するか」の価値はますます高まるだろう。

 不動産業界は今、データを保有する時代から、データを設計し、活用する時代へと大きく進み始めている。


記事提供:南総合研究所


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