近年、不動産業界においてSNSを活用した集客は急速に広がっている。これまではSUUMOやHOME’S、アットホームなどのポータルサイトが集客の中心であり、多くの不動産会社はそこへ物件を掲載することで反響を獲得してきた。しかし現在では、InstagramやTikTok、YouTube、XなどのSNSを通じて顧客を獲得する営業スタイルが確立されつつある。また、会社に所属する営業担当者ではなく、個人が情報発信を行い、自ら顧客を集める「不動産エージェント」という働き方も広がり始めている。SNSを入り口として信頼関係を築き、その後に問い合わせや来店、契約へとつなげる流れは、若い世代を中心に当たり前のものとなりつつある。
もちろん、現時点でも集客の主役はポータルサイトであることに変わりはない。物件を探すという行動において、検索性や情報量ではポータルサイトが圧倒的な強みを持っている。しかし、SNSは「物件を探している人」が見る媒体ではなく、「これから住み替えを考える人」「不動産に興味を持ち始めた人」に対して接点を持つことができる媒体である点が大きく異なる。つまり、まだ顕在化していない潜在顧客に対して早い段階から接触できることがSNS最大の特徴である。そのため、若年層を中心に「まずはSNSで情報収集をする」という行動が一般化しつつあり、今後この傾向はさらに強まる可能性が高い。
一方で、SNSを始めれば誰でも成果が出るわけではない。同じようにInstagramやYouTubeを運用していても、大きな成果を出す会社もあれば、ほとんど反響につながらない会社もある。フォロワー数だけでは測れない差が存在している。その違いを数多くの事例から見ていくと、一つの共通点が見えてくる。それは「顔出し」をしているかどうかである。
不動産は人生で何度も購入する商品ではない。賃貸であっても高額な契約であり、売買であれば人生最大の買い物になることも珍しくない。そのため、顧客は会社だけではなく「誰から買うのか」「誰に相談するのか」を非常に重視するようになっている。SNSは会社の広告ではなく、人と人とのコミュニケーションの場である。その中で顔を出し、自分の言葉で情報を発信している担当者は、視聴者から「この人なら相談できそうだ」という安心感を得やすい。

実際に成果を上げているアカウントを見ると、物件紹介だけを淡々と投稿しているケースは少ない。営業担当者自身が登場し、街を歩きながらエリアの魅力を紹介したり、住宅ローンや税金について分かりやすく解説したり、失敗しない物件選びのポイントを発信したりしている。こうした情報を継続して発信することで、フォロワーは自然と発信者の人柄や価値観を理解するようになる。その結果、「この人に相談したい」という状態が生まれ、問い合わせの時点で一定の信頼関係が構築されているのである。
顔出しにはもう一つ大きなメリットがある。それは他社との差別化がしやすいことである。不動産会社のサービス内容は似通いやすく、物件情報そのものも多くは共有されている。その中で競争力を生み出すには「人」の価値を発信する必要がある。営業担当者の知識や経験、人柄、考え方は他社には真似できない資産であり、それを伝えられるのがSNSである。会社名だけでは印象に残らなくても、「あの動画に出ていた人」「いつも役立つ情報を発信している人」として認識されれば、大きな競争優位性になる。
また、顔出しを続けることで社内にも良い影響が生まれる。営業担当者自身がブランドとなる意識を持つようになり、情報収集や勉強への意欲が高まる。投稿内容に責任を持つようになり、自然と専門知識も深まっていく。さらに採用活動においても、「この会社で働きたい」「この人と一緒に仕事がしたい」と感じる応募者が増えるケースも少なくない。SNSは集客だけではなく、人材採用や企業ブランディングにも大きな効果を発揮するのである。

もちろん、顔出しにはデメリットも存在する。プライバシーの問題や誹謗中傷への対応、会社を辞めた際のアカウントの扱いなど、慎重に考えなければならない点は少なくない。また、営業担当者個人の人気が高まり過ぎると、「会社のファン」ではなく「個人のファン」になってしまう可能性もある。そのため、会社としてSNSの運用ルールを整備し、発信内容やアカウントの管理方法を明確にしておくことが重要である。しかし、こうした課題は適切なルールづくりによってある程度コントロールできるものであり、それ以上に得られるメリットの方が大きいと感じる。
これからSNS運用を始めるのであれば、最初に決めるべきことは「どのSNSを使うか」ではない。「誰が発信するのか」、そして「顔出しをするのかどうか」である。匿名の企業アカウントとして運営するのか、それとも営業担当者が前面に立って発信するのかによって、戦略も投稿内容も大きく変わる。どちらが正解というわけではないが、SNSという人とのつながりを重視する媒体においては、顔が見える発信の方が信頼を得やすいことは、多くの成功事例が証明している。これからの不動産会社に求められるのは、単に情報を発信することではない。会社や営業担当者の「人となり」を伝え、顧客との信頼関係を築くことである。その第一歩として、顔出しを含めたSNS戦略をどのように設計するかは、今後の集客力を左右する重要なテーマになるだろう。
記事提供:南総合研究所















