不動産事業の「オイル」とは?〜不動産業におけるデータの重要性〜[南総合研究所]

  1. 不動産事業者向けコラム

不動産事業の「オイル」とはなにか? 

とあるテレビ番組で、とあるコメンテーターのかたが、「現代では、情報はオイルです」と言われていた。たしかに、現代では、情報は、貴重な情報資源である。最近では、レシートすらも買い取るサービスがあったり、ユーザーの不満を買い取るサービスもある。いずれにしても、個人の動向や傾向は、今後も貴重な情報源になるだろう。  不動産事業に関しても、データがようやく活用され始めてきたような印象がある。物件のデータや入居者、購入者のデータは、大いに役立てることができる。具体的には、不動産売却の際の査定、また物件獲得のための買取の目線。さらに賃貸管理物件の空室物件対策などがそうだ。今後は、それ以外でも、さまざまなデータが活用されていくだろう。

不動産データの重要性

不動産データの種類

では、このような不動産データには、どのような種類のものがあるだろう。

1.「物件データ」

 まずひとつは、「物件データ」である。物件の住所、また建物の種別、総戸数、そして成約実績、過去の募集賃料などがそうだ。ひと昔前は、この物件データをしっかり取得している企業が、Google検索などで大きな先行優位を取っていた。最近では、この物件データに共通IDを付与する動きが進んでいる。たしかに、物件データを個社で管理、ストックしていくより、共通のデータ利用のほうが、効率が良い。トークンや、DXなども、共通データがあることで、圧倒的に浸透するスピードは、高まるだろう。

2.「物件管理状況のデータ」

 また、それ以外には、「物件データ」のさらに下層にある「物件管理状況のデータ」もある。ひとつの物件に対する稼働率や、空室期間、リフォーム履歴、また法定点検の記録などがそうだ。このあたりの細かい物件管理状況のデータは、賃貸管理会社によって、その情報の密度が異なる。意外にも、大手不動産会社でも、この物件管理状況のデータは、整備されていなかったりもする。

3.「入居者データ」

 またさらに「入居者データ」というものもある。管理物件の入居者の属性がそうだ。入居者の年齢、性別、家族構成、職種、世帯年収などのデータである。実際、この入居者データは、賃貸管理業においては、大いに役立てることができる。同じ物件でも築年数が浅い時期の入居者データと、築年数が経過した時期の入居者データは、大きく異なる。このあたりもリーシング活動に大きく影響を与えることができるだろう。

4.「所有者(オーナー)データ」

 物件に紐付くデータには、他には、「所有者(オーナー)データ」というものもある。物件を所有しているオーナーの属性のデータである。年齢、住所、職業、物件購入の理由、借入の残債などがそうだ。このあたりの情報は、管理会社はほぼ当然のように、取得しているが、改めて項目の見直しをしても良いかもしれない。

以上のように、ひとえに物件のデータといっても、そこをさらに深掘りしていくと、多くの情報が取得することができる。現在は、賃貸管理の基幹システムで、かなりの情報をストックすることができる。問題は、このような情報を管理会社が、「取る」か「取らないか」が重要である。

物件以外に取得できるデータとは

では、物件に紐付くデータ以外に、他に取得できるデータはないだろうか。

それは、ユーザーのデータである。 

 たとえば、賃貸仲介業で、物件に問い合わせしたユーザーのデータなどがそうだ。ただ、そうはいっても、単に物件に問い合わせをした初動の段階では、名前とメールアドレス、電話番号などしか取得できない。またそれを再利用することは、個人情報保護法の問題があり、なかなか難しい。しかし、その後の接客応対などで、ユーザーの嗜好や引越し理由、希望賃料、希望設備などのデータを取得できる。これらは、顧客管理において、非常に効果的なデータになり得る。特に物件取得する際やエリア分析などに使用すると、大きな効果が生まれるだろう。

 また、申込をしたユーザーの申込データも大いに活用できる。申込時に取得した勤務先、年収、住所なども、大いに活用できる余地がある。このデータを大量にストックすると、どのエリアからどのエリアの引越しが多いのか、また収入による住まいのエリア分析や物件の嗜好傾向が見えてくることもできる。

 以上のように、不動産業では、様々なデータを取得することができる。では、このようなデータをどのように利用することができるだろうか。

不動産のユーザーデータ活用

ユーザーデータの活用方法

 ひとつは、今後の事業戦略に大いに利用できることである。4半期ごとに、このようなデータを見返し、課題を抽出し、打ち手を考える。たとえば、問い合わせをしたユーザーのエリアに偏りがあれば、それを補正したりもできるし、管理物件の空室期間が長くなれば、それに対する打ち手を考えることもできる。

 また、データ利用のさらなる利用方法として、新規サービスのアイデアの種にすることもできる。データを分析していくと、自分たちでは、気付けなかった新しい可能性を感じることができ、それが全く新しい新規ビジネスの立ち上げのきっかけになり得る。

 さらに、このようなデータを世間に発表することで、自社のブランディングにも役立てることができる。たとえば数値をまとめ、グラフ化して、PRをすると、そのデータを二次元利用する企業が生まれる。そうすると、引用元として、発信した自社の名前が出される。それにより、緩やかにブランディングの手助けをすることができる。

まとめ 

以上のように、不動産事業においては、日々様々なデータを取得することができる。取得方法は、とにかく日次の業務に「記録すること」を盛り込むことだ。「記録して、はじめて業務が完結」という文化を社内で作らなければ、データベースの構築は難しい。しかし、それが日常的になってくると、相当数のデータを自社で保有できる。そして、それがゆくゆくは、企業の「オイル」になり、さまざまな可能性を生み出すきっかけになり得る。けっして大企業だけではなく、中小企業でも、とても高い効果が発揮されるだろう。改めて自社のデータ取得を再度、見直してみても良いのではないだろうか?


記事提供:南総合研究所

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