たとえば、メゾネットの物件やデザイナーズ物件のように、物件そのものが尖っているものは、広告効果が高い。またそうした尖った物件に絞った不動産サービスも多く生み出されている。
SNS等を見ても、「デザイナーズ物件」、「ペット可能物件」のようなセグメントを行い、定期的に物件情報を発信しているアカウントは多く見られる。また戸建販売会社のチャンネルなどは、「建物探訪」的な角度から物件をアピールをしている。
こうした物件単体の動画配信や紹介は、一般の人にもとても興味深く写るし、何よりも試聴したり、物件情報を見ること自体が楽しい。
目次
今は、各種のSNSツールで多くの物件の紹介ができる。
より個性的であればあるほど、再生数は伸びるし、問い合わせにも繋がっていく。YouTubeやInstagramなどで、面白い物件を探してみれば、数えきれない程の物件を確認することができるだろう。
話は変わるが、以前、私が仲介事業を行っていた時、非常に多種多様のユーザーを対応していた。一般の会社員のかたもいれば、夜のお仕事の方もいたし、高齢者の方もいた。芸能関係の方もいたし、生活保護で生活されている方もいた。仲介という仕事は、ある意味、社会の縮図を垣間見ることができる仕事なのかもしれない。
ちなみに、その当時から、こうしたユーザーをセグメントし、特定のターゲットを対象とした仲介サービスは存在していた。「水商売のかた限定のお部屋探しサービス」、「高齢者のかた専門のお部屋探しサービス」などがそうだ。
当時は、こうしたユーザーセグメントをし、広告を行い、事業を運営しているサービスは、全ての企業がそういうわけではないが、かなり事業として上手くいっていた印象がある。
実際に、約10年前までは、こうした特定ユーザーに絞ったサービスを生み出し、LPを作り、そしてリスティング広告を少しかけていくと、割と集客が上手くいっていたのは、事実である。勿論、ユーザーからしても、こうした特定のジャンルの専門家に相談した方が安心できることは間違いない。
現在でも特定ユーザーに対してのサービスは、存在している。
- ルームシェア希望のかた専用のお部屋探しサービス
- 生活保護を受けられている方専用のお部屋探しサービス
- 高齢者のかた専門のお部屋探しサービス
- 楽器使用される方専門のお部屋探しサービス
などなど、他にもたくさんあるだろう。
冒頭に述べたように、物件自体の紹介動画は、再生数を多く獲得できる。
しかし、それが確実に収益に結びつくかと言われれば、なかなかそうは言えないケースも多い。
尖った特徴ある物件に興味を引くユーザーは多いものの、実際に問い合わせをして、内見をし、検討のうえ、契約まで至るというユーザーは、それほど多くはないだろう。
そう考えると、尖った物件単体で売上を確保する場合は、かなりの数の視聴数が必要になってくるかもしれない。
その点、ユーザーに絞ったサービスは、成約率はそれなりに高い。
そもそも賃料などの物件の条件より先に、入居条件(年齢制限、収入制限など)のほうを優先的に考えて部屋探しをしなければならない。ユーザーにとっても、自分自身の入居条件に対して、親身に対応してくれる不動産会社を頼りたいのは、当然のことなのだろう。こうした理由から、物件発信サービスよりも、ユーザーにスポットを当てたサービスのほうが成約率は高いのかもしれない。
しかし、現在、世の中のSNS上やWEBサイトでは、「尖った不動産サービス」は多く存在しているが、「ユーザーターゲットを絞ったサービス」はそこまで多くは存在していない。
仮に存在していたとしても、こうしたサービスを上手くSNSを活用し、発信している企業は本当に少ない。
たとえば、何らかターゲットを絞ったサービスを開発し、そのユーザーに対しての、お部屋探しのアドバイスやノウハウ、そして物件の提供などをSNSを駆使して、実行していけば、それなりの収益を生み出すことができるかもしれない。
視聴数やフォロー数はそこまで増加しなくても、成約率はそれなりに高いだろう。
今の時代、日本でも生活スタイルは大きく多様化している。もしかしたらこうしたユーザーターゲットを絞ったサービスは、不動産業界におけるブルーオーシャンなのかもしれない。
是非、不動産業者のかたは、検討してみてはいかがだろうか。
記事提供:南総合研究所