昨日ご紹介した「北九州家守舎」さんの”家守”という言葉が気になり、現代の家守事業について調べてみた。
そもそも「家守」とは、江戸時代における長屋の大家の呼称である。
土地・家屋を管理をしながら、地代・店賃の徴収を行った管財人で、町全体のマネジメントまでを担っており、地域全体の活性化を担う重要な役割をしていた。
現代の「家守」は、地域コミュニティの再⽣と地域産業の再⽣を⽬的とした、新たなビジネスネットワーキングを伴いながら、⽼朽化・遊休化しつつある既存ストックを活⽤してタウンマネジメントを⾏う。(国土交通省より)
遊休化しつつある既存ストック。遊休土地もあるが「遊休不動産」に焦点を当ててみよう。遊休不動産とは、店舗やビル、工場、倉庫や土地など、企業活動にほとんど使用されておらず活用されていない住居以外の不動産を指し、住居用に建てられた住宅は空き家と表現する。
空き家問題も深刻だが、遊休不動産の増加も社会問題となりつつあるといわれている。
そこで江戸時代の「家守」に倣い、衰退したまちの再生をめざした遊休不動産の再生・活用事業が全国各地で行われている。
全国のリノベーション、エリアマネジメントの民間の事例では有名な伊勢市の“おかげ横丁”等があげられる。
ここでは北九州市にある、メルカート三番街について詳しく見ていく。
北九州市は、福岡県北部に位置する市であり、92万人の人口を持つ政令指定都市である。その北九州市小倉北区魚町のサンロード魚町という通りにある商店街がメルカート三番街だ。
利便性もよく、多種多様な産業が集積しており、潜在的なポテンシャルが高いエリアであるが、長引く景気の低迷により、空き店舗や、テナントの撤退、人口減少等多くの課題を抱えていた。
そこで2010年7月、北九州市は振興プランを作るために「小倉家守構想検討委員会」を立ち上げた。
「小倉家守構想検討委員会」とは、株式会社アフタヌーンソサエティの清水代表を中心とした専門家とともに、地区の特色を生かした都市型ビジネス振興のコンセプトや具体的な空きオフィス等の活用方策を示したものだ。
2011年の6月にオープンしたメルカート三番街は、10年間空き店舗になっていたビルをクリエイター達がクリエイティブ拠点にリノベーションし、リノベーション物件での新規雇用者が300人を超え、商店街での歩行者通行量も7年間で28%もあがった。
遊休不動産の再生だけではなく、エリアの価値も高め、まちの再生をおこなったのだ。
国土交通省によれば、多くの地方公共団体で遊休不動産の利活用促進に係る支援策として、 空き家、空き店舗等の利活用に係る取得費 改修費・家賃に対する補助や助成、資金調達に伴う利子給などの取り組みが行われている。
そういった助成金等を利用して遊休不動産の再生と共に地域活性化をする事例もあるので、活用していきたい。
一例として長野市では、「まちなかパワーアップ空き店舗等活用事業補助金」という制度があり、空き店舗等の改修費・改築費及び付帯設備の設置に要する経費について1件あたり、1/2 以内、上限30万円、市が指定した通りへ出店する場合には、上限50万円の補助金が支給されるのだ。
現代版「家守」と、若い世代の人達の新しい取り組みをしたいという思いがマッチして、まちの再生に繋がる。リノベーションとエリアマネジメントによる遊休不動産再生事業という現代版「家守」の素晴らしい活動に今後も注目していきたい。
参考文献
・国土交通省
「土地・不動産・建設業: 地方都市における遊休不動産の利活用促進に関する調査」
「遊休不動産の利活用に関する地方公共団体の計画や支援策等」