小さな不動産会社での新規事業構築方法【南総合研究所】

  1. 不動産事業者向けコラム

 最近、落ち着いてきたような気がする不動産業務改革まわりの新商品の発表だが、ここ数ヶ月は、また盛り上がり始めているようだ。物件データ化やユーザーの管理をベースにしたCRM的な要素を盛り込んだサービス、そしてRPAなどを利用した最新の業務ツールなど、多種多様なサービスが生まれてきている。こうした取り組みは、今後もより進んでいくだろう。確実にテクノロジーの進化による不動産業界の業務改善は、進んでいるように感じる。(勿論、何をどうしても変わらない部分もたくさんあるが)

  またこうした業界の変化と並行するように、大手の不動産会社もさまざまな新規ビジネスを生み出し始めた。コンセプトマンションの発表や、新しいシェアオフィスの開発、環境に配慮した新しい住宅シリーズなど、こうした新規のプロダクトも、最近は随分いろいろと発表されているようである。

 業務改革であれ、大手系不動産会社の新プロダクトであれ、今後の不動産業界の変革に向けての歩みは今後も早くなっていくことだろう。

小さな不動産会社では、こうした新規事業の取り組みは可能なのか

 ちなみに、小さな不動産会社では、こうした新規事業の取り組みは可能だろうか?

 小規模な不動産会社でも、こうした新しいビジネスに対して貪欲な会社もあるだろう。もちろん、不動産業界は、高齢者の経営者も多く、なかなか新しいものを取り入れたり、新しいことを行うことに足が重いことがあるというのもひとつの事実ではある。しかしながら、新しいことにチャレンジをしてみたいと考えているモチベーションが高い経営者は、最近増加傾向にあることは間違いない。特に40代から50代の不動産会社経営者は、他の業種よりもこうした新規事業に対して積極的な印象がある。

 では、実際にこうした「小さな不動産会社」で新規事業を行う際に、どのように進めていけば良いのだろうか?今回はこうした取り組み方法の一例を簡単に紹介してみたい。

「小さな不動産会社」で新規事業を行うときの進め方

1.他社にはない強みを確認する

 ほとんどこれが全てといっても過言ではないのだが、他社にはない「強み」を見つけた段階で、ほとんど新規事業立ち上げの半分は終わったようなものだ。社内にいると、わからない自社独自のサービスやフローがないかどうかをまず徹底的に確認する。

 たとえば、手厚いオーナーの訪問を行なっている管理会社。これはこれで立派なサービスだ。さらに訪問時のオーナーレポートなどをこだわっていれば、二重丸である。

 これだけ見ると、「たかがこんなことで新規事業になるのか」と思われるかもしれないが、充分な内容である。また、たとえばこだわりにこだわった他社とは異なる内見動画を撮影している仲介会社や、紹介時に他社とは違ったサービス提供をしている仲介会社などもそうだ。

 なによりも大切なことは、会社の文化として成り立っているもので、他社がやっていないことを改めて考えてみることが大切である。(専門的には経路依存と言われる)

 また当然ながら、最低限の市場調査もしておかなければいけない。意外と他の同様のサービスなどが世の中にあることも多いので、注意が必要だ。

2.切り出したサービスを自社内で育てていくのか、他社にも販売するのか

 上記のような自社独自の「強み」に対して、「それを育てていき、自社内で切り出して売る」のか、「サービスを商品化してそのモデル自体を他社に販売していく」のかを検討する。

 さらに自社内での切り出し販売の場合は、それ単体のみだと収益が上がりにくい場合は、「何かと掛け合わせて販売する」という選択肢もあるし、また、「新規事業として単体での収益性を考えず、相乗効果の高い事業と組み合わせて、拡販していく」という戦略もある。

 いずれにしても、単純にサービスを作るだけではなく、その売り方が非常に重要になってくるのだ。当然、価格や拡散方法や細かい商品設計も同時に進めて行くなければいけない。

3.サービス設計を行い、サービス名を考える

 上記の検討している新規サービスの設計(価格や売り方など)を決め、さらにサービス名まで固める。

 正直、このあたりまで進んでいくと、ゴールは目前だ。ポイントは、「作り込みすぎない」ということが重要である。こういったご時世で新規事業を実施する場合、サービスはどんどん変化していっても良い。粗い状態で、走り出すことが重要だ。

4.PR戦略を用いて、市場に投下。その後、改善を行う。

 「prtimes」などの媒体を使ったり、SNSで拡散を図ったりなどし、サービスを広報していく。今の世の中は、面白いサービスであれば、いくらでも拡散はしていく。また、拡散していけば、そのサービスに触れたいユーザーが発生する。そこで初めてこのサービス自体の効果検証が図られるのだ。

  先に述べたように、新規のサービスを開発するために、特段莫大なコストは必要ない。(サービスによるが)

 あくまで重要なことは、自社の「既にあるもの」をどのようにプロダクト化していくかだ。仮に新しいサービスでも、社内の有効なリソースと掛け合わせることで、その成功確率は高まる。是非、現在の業務のなかで、他社との違いを改めて見直してみても良いかもしれない。以外と大きな金脈があるかもしれない。


記事提供:南総合研究所


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